▼人の顔を採寸したリアルな仮面10万円也
▼ロシア語や中国語のメールが続々
「あなたの顔を4万円で買います」。インターネットに不思議な募集があった。締め切った後も「1日20件」も応募があるという。もちろん、買い取るのは顔そのものではなく、顔のデータ。募集主の目的は何か。フリーライターが直撃した。
昨年10月、インターネットで顔のデータを提供する人を募集したのは、東京都墨田区にある仮面専門店「仮面屋おもて」の店主、大川原脩平さん(30)だ。
東京の下町を走る京成押上線の駅を降り、向島橘銀座(たちばなぎんざ)商店街にある店を訪ねた。通りから店をのぞくと、西洋の仮面舞踏会に出席する人が着用するようなエレガントな仮面や、テレビの戦隊モノに出てくるヒーローがかぶりそうなお面が壁一面に飾ってある。国内外の仮面を常時200点前後揃(そろ)えているという。2階に上がると、現代アートの作家が作った仮面やガスマスク、アニメや漫画の影響で中高生に人気があるというキツネのお面が展示してあった。
大川原さんの募集は「プロジェクト『あの顔』」という。募集に賛同した人に顔写真を提供してもらい、大川原さんが気に入ったものを選ぶ。それを基に顔をあらゆる角度から採寸してリアルな仮面を制作し、1個9万8000円で販売する。選んだ人の氏名など個人情報は他人には知らせず、顔のデータを提供した対価として4万円支払う。
なぜこんなことを思い付いたのか。大川原さんに聞いた。
「他人が自分の顔を買って、それを基にした製品が世の中で売られる。いかにもフィクションでありそうじゃないですか。実際にやってみたら、面白いんじゃないか。そう思ってやってみたんです」