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2021年1月 3日号
老後にならない健康術 原因は「喉」や「感情」に...
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◇「声筋」は何歳からでも鍛えられる

最近つまずきやすくなった、声がかすれる、疲れやすい、ひらめきがない――こんな〝心身の老化〟を感じている人もいるだろう。「もう年だから」と嘆いていても始まらない。老いに抗う行動をすれば、忍び寄る病を防ぎ、健康寿命を延ばすことにつながるのだ。

何もないところでつまずいてしまう。その主な原因は何と「喉」にあるという。喉は声を出す、息をする、食べものをのみ込むだけでなく、体を安定させて力を入れる、踏ん張るといった役割を担っているのだ。

山王病院国際医療福祉大東京ボイスセンターの渡邊雄介医師は、喉筋肉を〝声筋(こえきん)〟と名付け、その重要性を訴える。

「声筋とは、喉仏の下にある左右5個ずつ、計10個の筋肉のことです。左右一対のペアになっていて、開いたり閉じたりするんですよ。それによって私たちは声を出したり、息を吸ったり、のみ込んだりできる。特に人間は力を入れる時は必ず喉が閉まるんですね」

イメージしづらいが、声筋によって喉を閉じ、肺を膨らませ、姿勢が安定して力を出すことができるのだ。ここで声筋の衰えによって喉がピッタリ閉じられないと、姿勢を保てず、転びやすくなるという。

「物を持ち上げる時、『よいしょ』と言うでしょう。声は声帯を閉じていなければ出せないので、声を出す=喉が閉じる=力が入るのです。一流のアスリート選手、たとえばハンマー投げの室伏広治さんは『出したい力によって発声する音を使い分けている』と著作に書かれています」(渡邊医師)

他の体の筋肉と同様、声筋も30代から衰えるという。特に今年はコロナ禍でコミュニケーションが減り、歌ったり話したりして声筋を鍛える機会が減った人が多いのではないか。

渡邊医師は、喉の健康状態をチェックできる「あーテスト」を勧める。やり方は簡単だ。一息で鼻から空気を大きく吸い、「あー」と、できる限り長く声を出す。健康な男性の場合は30秒間、女性なら20秒間は出せる。その手前でかすれたり、途切れたりしてしまう人は、声筋が衰えている恐れがあるそうだ。

私もトライしてみたが、20秒ギリギリ。15秒を切ると老化しているサインとのこと。さらに男女ともに10秒間出し続けられない場合は耳鼻咽喉科、それもできれば声や喉の悩みを相談できる医療機関(注※)を受診した方がいい。

「10秒も声を出し続けられない場合は咽頭(いんとう)がん、声帯麻痺(まひ)などの病気でないことを確認しなければいけません。声帯麻痺の中には、大動脈瘤(りゅう)やがんなどが隠れていることもあります」(同)

10秒間は出せたけれども、私のように20秒ギリギリであったり、やや下回る人、また声が聞き取りづらいといわれる、ペットボトルのフタが開けづらい、ゴルフの飛距離が落ちたなどという人は、ぜひ声筋を鍛えてみよう。渡邊医師によると、喉とは「粘膜に覆われた筋肉」で、他の体の筋肉と同じように何歳からでも鍛えることができるとか。

そこで、初心者でも簡単にできるものを二つ教えてもらった(上)。

一つは「お風呂カラオケ」。湯船につかってリラックスした状態で、歌詞を覚えている曲の1番を歌うのだ。「いつも同じ曲」を歌うことで、この部分の裏声が出なかった、息継ぎがいつもは2回だけど今日は1回で済んだなど、些細(ささい)な変化に気付きやすくなるという。

「お風呂場は湿気が多いですから、喉にとっていい環境。毎日1番だけ、3分間でもいいので続けてほしいですね。私は昭和時代にレコード大賞を受賞した曲を勧めているんですよ」(同)

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