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2023年11月 5日号
韓国 軍拡で世界軍事力ランク6位 世論で広まる独自「核武装論」
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 日本ではあまり知られていないが、韓国では2年に1回、「ADEX」と呼ばれる国際航空宇宙・防衛産業展示会が開催されている。2021年に続き今年はソウル市の南、城南市にあるソウル空港で行われた。

「わが国の防衛産業は、無から有を創造した。新たな歴史を執筆中だ」。開会式で韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は高らかに述べた。実際に朝鮮戦争から米軍主導で整備されてきた韓国軍も、自主開発の艦船や戦闘機まで製造するようになった。

 この数年の韓国の防衛産業はめざましい。装甲車や練習機などはすでに10年前から、インドネシアやポーランドなどへ輸出されている。21年の輸出額は70億㌦、22年には170億㌦となり、今年23年には200億㌦水準になりそうだ。

 とくに22年にはK2戦車980両、K9自走砲648門、国産FA50軽攻撃機48機を受注した。ポーランドはロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナに兵器支援を行った結果、その補充として韓国製を選んだことになる。

 日本もようやく国産装備の輸出を本格化させているが、「ガラパゴス」的な装備運用と値段の高さでなかなか開拓できていない。また「軍」「兵器」への忌避感も強い。一方で、日本を「軍事大国」と言い、時には批判交じりの視線を向けてきた韓国が、いつの間にか大軍事産業を抱えたことになる。

 世界の軍事力ランキング(「グローバル・ファイヤーパワー」)によれば、23年は韓国は6位。日本は8位と、日本の方が下回っている。このランキングは、各国の軍備・兵力、財政状況、地理的条件などが総合的に考慮されたものだ。北朝鮮と対峙(たいじ)し、朝鮮戦争がいまだに「休戦」状態にある国としては、日本を追い抜いても当然との見方もある。

 その北朝鮮に対し、韓国はどう対処するかという最大の問題がある。現在の尹政権は保守的で、北朝鮮には圧力をかけて強い対応をとるという性格が強い。

 実際に、23年4月に行われた米韓首脳会談で発表された「ワシントン宣言」には、米国の拡大抑止(核の傘)を拡充させ、韓国が協力するという内容になっている。日本もこの方針の下、日米韓の3カ国が共同して北朝鮮の核の脅威に対処する方針を固めた。

 しかし、韓国で一つの動きがある。北朝鮮の核に対処するため、そして、東アジアの安定のためには、「韓国も独自で核武装すべきだ」という主張がじわじわと広がっているのだ。

 最近、『われわれはなぜ核保有国にならなければならないのか』という本も韓国で出された。この数年間、韓国の世論調査では、回答者の6〜7割が独自に核兵器を持つべきだと答えている。

 同書では、抑止力を考えて核兵器を持つことで、通常兵器への投資を減らすことができる。そして、そのぶん教育や福祉、環境分野への投資を増やせるとの主張も展開されている。世界唯一の戦争被爆国・日本としては、隣国の気になる動きでもある。

(浅川新介)

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