サンデー毎日

国際
News Navi
2023年8月13日号
北朝鮮 「祖国解放」記念日に中露訪朝 それでも遠い中朝国境「開放」
loading...

 7月27日は朝鮮半島の分断を決定づけた朝鮮戦争(1950〜53年)の休戦日だ。ところが北朝鮮では「祖国解放戦争勝利記念日」と名称が変わる。

 今年は70周年の節目ということで北朝鮮は、この国家的記念日に力を入れた。軍事パレードも行われたが、それに花(?)を添えた形で、中国とロシアからの代表団が入国した。

 朝鮮戦争において、両国は特別な存在だ。中国は義勇軍と称して参戦した。ロシアは表だった参戦はしなかったが、強力な支援を行った関係がある。

 特にロシア側はショイグ国防相率いる代表団を送り、北朝鮮との関係を重視する姿勢を見せた。ロシア国防省は「今回の訪問はロシアと北朝鮮の軍事関係を強化し、両国間の協力関係発展において重要な契機となる」と声明を出してもいる。

「武装装備展示場」も金正恩総書記は案内した。ウクライナ戦争が続いており、北朝鮮から兵器がロシアへ輸出されている可能性がこれまで指摘されてきた。ただ、「北朝鮮に兵器などを輸出する余裕はない」(韓国の研究者)との見方がある。一方、これまで輸出はなかったとしても、今回のショイグ氏の訪朝でそういった支援を協議する可能性は残る。

 中朝関係を「血の同盟」と称してきた中国は、中国共産党の李鴻忠・政治局委員らの代表団が訪朝した。李氏は中国の最高指導層25人の1人。日本の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)のナンバー2(副委員長)だ。

 ただ、この人選は儀礼的なレベルだ。習近平国家主席に忠誠を誓って政治局委員になったものの「実質的な権力は持たない」(中国人研究者)。今回のような同盟国の行事には、まずはこのレベルの職位の人、という意味しか持たせなかったようだ。

 中露が訪朝団を送り込んだのは、世界情勢が背景にある。前出のようにウクライナ戦争が継続し、欧米と中露というブロック化が進んでいる。中露側が自陣営を固めようという意思が垣間見える。北朝鮮は当然、米国と激しく対立していることもあり、中露ともこれまでの歴史を振り返っても、関係がとてもよい。

 2020年1月に新型コロナウイルス感染症の拡大で国境を閉じた北朝鮮が、これを契機に国境を開放するという見方も出ている。特に中国・北朝鮮のビジネスパーソンらは、「今か今かと開放を待ち望んでいる状態」(中国・丹東市の中国人ビジネスマン)だ。

 しかし、政治の論理がどこまでも優先する北朝鮮。「国民の健康を考えて国境を閉鎖したので、それを解除するには経済的な理由ではできない」(北朝鮮関係者)。一つの節目としては、WHO(世界保健機関)による「コロナ終息宣言が出されたとき」(前出の北朝鮮関係者)のようだ。

 だが、日本の状況からわかるように、まだコロナ感染は世界で続いており、早晩WHOが宣言する可能性は低い。北朝鮮の鎖国状態は、まだまだ続きそうだ。

(浅川新介)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム