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2023年7月23日号
韓国 福島第1原発の処理水放出を国内政争の「具」にする野党側
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「科学的」なことは論理的。でも、それが通じない時がある。東京電力福島第1原発から出る処理水について、韓国が猛反発しているのが、それだ。

 8月には海洋放出が始まる予定だ。国際原子力機関(IAEA)は報告書で「処理水放出による人や環境への放射線の影響は、無視できるほどごくわずか」と評価し、「国際的な安全基準に合致する」と結論づけている。さらに、7月にはIAEAのグロッシ事務局長が来日し、現地でも意見交換を行い、科学的な説明を現地で行った。

 だが、韓国は黙っていない。特に最大野党「共に民主党」を中心に、処理水を「汚染水」と言い換え、日本の放出方針に強く反発している。議会は野党が過半数を占めていることもあり、「放出すれば日本産水産物全体の禁輸を検討する」など、反発を強めている。

「海と水産物が汚染される」との風評被害も日本以上だ。韓国国内では水産物消費が減り、漁業関係者や外食産業に打撃を与えている。また、海水から取れる塩も買い占め騒動が起きている。韓国産を避ける消費者が増加。日本を旅行している韓国人に、「塩を買ってきてくれ」と頼む韓国人も増えているようだ。

 IAEAの報告に対しても、野党側は「誰が見てもIAEAは日本と共同作業を行い、日本の論理のまま報告した」という意見が大勢を占めている。科学的で建設的な議論がまったくできない状況にあるのだ。

 政府・与党「国民の力」はIAEAの結果を尊重すると発表し、これまでも野党側の攻勢に対応してきた。韓国内の原子力専門家も「非科学的な話が蔓延(まんえん)している」とし、メディアに出演し、科学的な安全性をアピールしている。

 ここまで韓国の野党が反発するのは、処理水の問題を国内政争の「具」にしているため。革新系の文在寅(ムン・ジェイン)前政権で日韓関係は悪化したが、現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が一気に改善させた。そういった姿勢に「親日」とのレッテルを貼り、政権運営に支障を来そうとしている意図が丸見えなのだ。

「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表らは釜山などの水産市場を行脚し、批判を展開。一部の議員らは断食をし、6月下旬には野党の一つ「正義党」の李貞味(イ・ジョンミ)代表らが、ソウルの日本大使館前で断食の座り込みをした。ただ、世論調査で韓国国民の約8割が放出に不安と答えているのも、野党側の錦の御旗(みはた)になっている。

 処理水放出に対する不安、また風評被害の拡大を恐れるのは日本も同じかもしれない。東日本大震災と津波被害、そして国際的な事故評価尺度で最悪のレベル7とされた未曽有の原発事故......。それらを考えれば心理的な不安を抱えることは理解できなくもない。

 しかし、だからといって他国の問題を自国の政争の具にするのは行き過ぎだ。それこそ「日本のことは全て反対しても許される」という〝反日商売〟に韓国の野党は没頭している。

 日本にとって「最大の風評加害者は、もはや韓国」という事態だけは避けてほしい。

(浅川新介)

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