来年の米大統領選に向け、ついに「第二の男」フロリダ州知事、ロン・デサンティス氏が5月24日、出馬表明した。共和党候補指名を目指すと発表した。
現在、共和党候補の支持率では1位のドナルド・トランプ氏(76)と比べるとぐっと若い44歳。トランプ陣営はデサンティス旋風を恐れており、娘であるイバンカさんは「デサンティス氏はまだまだ若い、次がある」などと牽制(けんせい)していた。政治の若返りを求める人々の支持が、政策的にもトランプ氏に近いデサンティス氏に流れることを警戒しての発言だろう。
ところが、若返りを狙いすぎたのか、デサンティス氏の出馬宣言はツイッターへのビデオ投稿だった。さらに、その音声配信機能を使ってツイッターの運営会社を買収した、電気自動車(EV)大手テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏と対談した。元々、トランプ支持を表明していたマスク氏だが、デサンティス氏に乗り換えたことを公にしていた。
だが、アプリが停止したり音声が途切れたりし、約30分後に仕切り直しを迫られた。これらも含め非常に不評であり、「史上最悪の出馬宣言」と批判された。中には「DeSantis」をもじって「DiSaster(災難)」と揶揄(やゆ)する声もあるほど。マスク氏は自身が持つロケット会社スペースXのロケット打ち上げをもじって「まもなく発進」などのアナウンスを行った。だが、30分近くこの状態が続き、人々がアクセスを取りやめてしまった。最終的に出馬宣言そのものは行われたものの、打ち上げは「不発」という結果だった。
これを受けて現時点での両者の支持率は、米キニピアック大の世論調査によると、トランプ氏56%に対し、デサンティス氏25%と31㌽の差がついている。もちろん出馬宣言だけが原因ではなく、これに先立ってデサンティス氏は積極的に経済界や海外政治家などにも面会、会合を続けていたが「話が退屈、面白みがない」などことごとく不評だった。
地方政治の世界しか知らず、トランプ流の超タカ派で話題になったものの、外交や国家レベルのビジョンを欠くことがあらわになった形だ。例えばバイデン大統領と共和党が合意した米国の債務上限引き上げについても「国を破綻に導く愚かな決定だ」と批判はした。しかし、代案を用意せず批判だけに終わった形で、これまで共和党に多額の献金を行ってきた人々からもそっぽを向かれつつある。
デサンティス氏出馬に対し激怒していたトランプ氏だが、出馬宣言の失態には大喜びのようで「こんな惨めな出馬は見たことがない。デサンティスの政治生命は終わりだ」などと語り、こちらはこちらで「大人げない」と批判されている。
米経済が度重なる利上げやインフレで景気後退の瀬戸際にあることもあり、ウォール街を中心とする経済界では、「トランプでもデサンティスでもない第三の男」の出現を望む声も上がっている。民主党側もバイデン氏に代わる候補が現れず、次期の大統領選は「史上最高に退屈なものになる」という悲観的な見方も出てきた。
(土方細秩子)