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2023年4月 9日号
米国 「3・21」逮捕情報から見えた 揺らぐトランプ氏の「存在感」
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「来週火曜日(3月21日)にニューヨークのマンハッタン地区検事局に逮捕される可能性がある。抗議せよ」

 トランプ前米大統領がこう訴えたのは同18日のことだ。逮捕の容疑とされているのは2016年の大統領選前に「不倫関係にあった」とされる元ポルノ女優に対し、トランプ氏の弁護士が「口止め料」を支払ったとされる件。13万ドルの支払いは「弁護士費用」と会計処理したことが、当時トランプ氏が居住していたニューヨークでは州法違反に当たるとの疑いで、捜査が続いていた。

 しかし、これに呼応してニューヨークに集結した支持者は想定よりもはるかに少なく、21日の起訴がなかったことなどから大きな騒動には発展しなかった。ただし、今後に起訴が行われる可能性はゼロではないため、市当局は厳重な警戒を行っている。

 トランプ氏本人は「何も間違ったことはしていない。今回の起訴はマンハッタン地区検事、アルビン・ブラッグによる政治的な捏造(ねつぞう)だ」などと主張。しかし「起訴されれば堂々と出頭する」とも語っている。

 もし、起訴された場合、米国の大統領経験者としては初の刑事告発対象者となる。しかし、今回の起訴内容についてはマッカーシー米下院議長も「起訴するためにあらゆる理由を探している、としか思えない」と否定的な見方をしている。トランプ氏の場合はほかにも疑惑が多いため、言わば「別件逮捕」のような扱いで、ほかの疑惑への追及も行われるのでは、という疑念もある。逮捕起訴された場合、来年の次期大統領選にも影響する可能性があり、やはり政治的意味合いが強い、と受け止められる面があるのは確かだ。

 すでに次期大統領選への出馬を表明しているトランプ陣営は、7400万人と自ら主張する支持者にメールを送信し、「起訴に対する嘆願書」への署名を求めている。ただし、この嘆願書に署名した場合、ページがトランプ陣営への寄付金サイトに移動し、寄付を求められるという。「企業からの大口寄付金など必要ない。私は自己資金で選挙を戦っている」と前回20年大統領選では豪語していたトランプ氏だが、内情は苦しいのかもしれない。

 現時点でどれくらいの署名が集まっているのかは明らかにされていない。トランプ氏は「集まった基金は1500%のインパクトを与える」としているが、その使途などについても明確にはされていない。

 3月21日の時点では、報道などで取り上げられた割には、少ない人数によるデモが行われただけだ。しかし、もし今後、本当に起訴が行われた場合は暴動に発展する可能性も否めないため、ニューヨーク市警では3万人規模の警察官に待機を命じている。

 一方、起訴が行われてももしそれほどの人数が集まらず、騒動に発展しなかった場合には、トランプ氏の影響力の低下が明らかになる。今回、不確かな情報で支持者をあおったのも、トランプ氏の焦りの表れなのかもしれない。

(土方細秩子)

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