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2023年3月26日号
米国 上院に利用制限法案を提出で北米でも「TikTok」包囲網拡大
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 中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に対する包囲網が広がっている。米議会上院では3月7日、超党派の議員12人が外国製の情報通信サービスや機器の国内利用を制限する新たな法案を提出した。実現すれば、外国製の電子機器、ソフトウエアなどが国家の安全の脅威となり得るか審査し、禁止するかどうかを商務長官が判断することになる。

 法案は特にティックトックをターゲットとしたものではないが、昨今の欧米に広がるティックトックへの警戒感から、これを想定したものであることは明らかだ。ティックトックに関しては、昨年の時点で米議会で「アプリを通して個人情報が盗まれている可能性がある」と問題視されていた。その後、カナダと米国では政府管理のデバイスからのアプリ削除、つまり政府関係者が利用することを禁じる法案が制定された。また、ニュージャージー州とオハイオ州は独自にティックトック禁止条例を制定した。

 欧州でも同様の動きがあり、2月23日には欧州連合(EU)の行政機関、欧州委員会は全職員に対して使用を禁止するとともに、3月15日までに使用する端末からティックトックのアプリを削除するよう求めた。米政府内には今回の法案ですら手ぬるく、米国全体でティックトックの使用を全面禁止にすべきという強硬派も存在する。

 今回、米国で法案を提出した上院情報特別委員会のマーク・ワーナー上院議員(民主党)は「米国では1億人のティックトックユーザーがいる。これまで中国に盗まれた米国の特許技術などを考えると、その影響は計り知れない」とコメントした。さらに、この法案は中国だけでなくロシア、北朝鮮、ベネズエラ、キューバなど「米国にサイバー攻撃を仕掛ける可能性がある、あらゆる国への警戒度を高めることにもなる」としている。

 また規制対象となるのはSNSなどのソフトウエアだけではなく、人工知能(AI)、金融システム技術、量子コンピューター、Eコマースなども含まれる。特に重要視されているのは衛星、クラウドサービス、インターネットインフラ、モバイルネットワーク、ドローン、テレビゲーム、決済システムアプリなど、今後のビジネスや生活に欠かせない新技術などだ。

 当然、中国側は決定に大きく反発している。ティックトックの米広報担当者は「我が社は中国政府から個人情報の提供要請などは受けていないし、受けたとしても応じる考えはない」とし、米国のユーザーのデータ管理は米IT大手のオラクルに委託しており、米政府からの要望にできる限り応えてきたことなどを挙げ、「米国内での運営存続を望む。禁止は米国人の表現、言論の自由を規制することになる」と反論。中国政府も「いわれなき差別だ」と不快感をあらわにした。

 ティックトックに関しては「飲酒チャレンジ」という動画に参加した大学生が急性アルコール中毒で病院搬送される事故もあった。安全面からだけではなく「若者の文化面にも悪影響がある」という意見もある。このままでは中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の二の舞いになることは間違いないだろう。欧米の危機感に日本も追随することになるのだろうか。

(土方細秩子)

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