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2023年3月12日号
米国 次期大統領選に出馬表明した共和党ヘイリー氏とは何者か
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 女性初の米大統領は共和党から誕生するのか。今、米国で最も注目を集めているのが、共和党から2024年の次期大統領選への立候補を表明したニッキー・ヘイリー氏(51)だ。

 ヘイリー氏はインド系米国人で、サウスカロライナ州選出の下院議員、同州知事を経て、トランプ前大統領の下では国連大使に就いた。知事としては同州初の女性及びマイノリティーとしての就任が話題となり、また、当時は全米で最年少知事だった。

 ヘイリー氏は2月14日、バレンタインデーに大統領選への出馬を表明。これはトランプ氏に次ぐ2人目の候補だ。共和党ではフロリダ州知事のロン・デサンティス氏の立候補が確実、とされているものの、まだ正式には表明していない。

 民主党はバイデン大統領が再選を目指す方向で調整しているが、トランプ対バイデンの「アラ傘寿(80歳)」ペアと比べるとヘイリー氏の登場は一気に若返りとなる。本人もそれを強調し、開始されたキャンペーンでは「新世代の政治」「自分は活動の最盛期」などが強く訴えられ、「75歳を過ぎた政治家はメンタルヘルスチェックを受ける、という規則を設けるべき」とまで言及した。

 ところが、これに対し、まずCNNニュースの司会者であるドン・レモンが「彼女は最盛期ではない。一般的に女性の最盛期と言われるのは20代から30代、遅くとも40代まで」と発言して炎上。女性蔑視だ、差別的だ、との意見が寄せられたがレモン本人は「グーグルで『最盛期』と調べても、そういう答えが得られる」と釈明した。

 また、これを受けて名優、ウーピー・ゴールドバーグが「彼女は新世代なんかじゃない。すでに51歳だし、彼女の政治的主張は旧態依然そのもの」と批判。民主党初のジェネレーションZ(1990年代以降の生まれ)下院議員であるマックスウェル・フロスト氏の名前を挙げ、「彼らのような政治家こそが新世代と呼ばれるべき」と付け加えた。

 もう一点、人々を不安にさせているのが、ヘイリー氏が中国に対する超強硬派である、という点だ。かつてCNNのインタビューで「中国は将来歴史のゴミ箱になる」と発言したこともある。気球問題などを巡って米中関係に緊張が走っている今、中国を刺激しすぎる発言が飛び出すのでは、と懸念する声もある。

 一方、「ヘイリー氏への攻撃は無知と人種差別による偏見が混じったもの」と、同氏のこれまでの功績を高く評価する声もある。何よりも保守的で白人至上主義が根強いサウスカロライナで、若くしてマイノリティー女性として知事に選出された、というのは大きな武器だ。

 ヘイリー氏は例えて言うなら共和党版のカマラ・ハリス氏だろう。女性初、黒人とアジア系の両親を持ち副大統領に選ばれたハリス氏は、年齢や経歴などヘイリー氏と似通った面が多い。

 バイデン氏が再選を諦めた場合、現職の副大統領は一番の候補となる。ハリス氏の場合は人気が低い、という欠点はあるが、次期大統領選に出馬すればマイノリティーの女性候補同士の一騎打ち、という構図が、もしかしたら見られるかもしれない。

(土方細秩子)

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