サンデー毎日

国際
News Navi
2023年2月 5日号
米国 前大統領に続き現職にも浮上 機密文書疑惑に揺れる米政界
loading...

 米国の政治は2023年の年明け早々から波乱の展開を迎えている。まず昨年の中間選挙で下院多数派となった共和党だが、1月3日から始まった下院議長選で造反者が続出。15回もの投票の末に同7日にようやくケビン・マッカーシー議員が選出された。

 これはトランプ前大統領を支持する議員らが、共和党本流の考えに背いたために起きた。最終的にはトランプ氏自身が造反議員に対し、マッカーシー氏への投票を呼びかけるという異例の事態となった。

 ようやく落ち着いたかと思えば、次に噴出したのがバイデン大統領の機密文書の持ち出し疑惑だ。これはバイデン氏がオバマ政権で副大統領を務め、任期を終えた後で機密文書を自宅や個人オフィスに保管し続けていたというものだ。

 この手の問題は米国では決して珍しくはない。トランプ氏も任期終了後にフロリダ州の自宅などに機密文書300件以上を保管していたことが発覚した。しかも返還を拒んだため、最終的に連邦捜査局(FBI)が自宅を家宅捜索するという事態にまで発展した。

 これに比べると、バイデン氏のケースでは文書数そのものが累計で30件程度と見られ、バイデン氏本人も文書を直ちに国に返還、捜査に協力的だ。しかし、現役の大統領の犯したミスは大きな波紋を呼んでいる。

 現在、米司法省はトランプ氏の時と同様、政権から独立して捜査を担う特別検察官を任命し、この件に関する追及を進める構えだ。民主党も今回の一連の事案について「恥ずべきこと」という認識を示した。下院司法委員会も特別小委員会がトランプ、バイデン両氏に対する司法当局の捜査姿勢などを議論する。

 これに激しくかみ付いているのは共和党で「バイデン大統領の自宅への家宅捜索を行うべきであり、自宅に出入りした人々の記録も提出させるべきだ」としている。また、トランプ氏の自宅が捜索されたのにバイデン氏では行われていないのは「ダブルスタンダードだ」と糾弾もしている。

 だが、その共和党もトランプ氏が機密文書を「私物だ」と主張して捜査当局に提出しなかったことなどについては口をつぐんでいる。また、発見された機密文書の数の多寡についても不問に付している。つまり共和党はバイデン氏の事例を鋭く突くほど、トランプ氏の事例を突き返される「諸刃(もろは)の剣」あるいは「ブーメラン」状態。だが、現状はこれを武器に民主党を糾弾せざるを得ない状態だ。

 いずれにせよ、今回の件はバイデン、トランプ両氏の政治的生命を危うくさせる事態に発展する可能性がある。来年の次期大統領選に2人とも出馬の意欲を示しているが、司法の場から退場命令が下される、あるいは世論が「信用できない老人たち」と判断することになるかもしれない。

(土方細秩子)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム