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2023年1月15日号
米国 24年に大統領選を控える今年は「トランプ失墜」の一年になるか
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 2023年は米国にとって翌24年の大統領選を控え、政治上の重大な一年となる。しかし、22年11月に大統領選への出馬表明をした共和党のドナルド・トランプ前大統領にとっては、大きな「失墜」の年となる可能性が大きくなっている。

 米下院特別委員会は22年12月19日、21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件について司法省に対し、トランプ氏の刑事告発を行うことを全会一致で決めた。問われる容疑は▽議会襲撃の扇動・ほう助▽選挙の結果承認手続きの妨害▽国家を欺くための共謀▽選挙結果を覆すために偽の選挙人を仕立てるための共謀――の四つとなっている。

 もし刑事訴追されて有罪となった場合、今後公職に就くことができなくなるため、当然ながら大統領選に出ることは不可となる。そもそも22年11月の中間選挙で共和党の大勝利を導くことができなかった時点で、トランプ氏の影響力はかなり低下している。

 数字上でも、12月13日にUSAトゥデー紙とサフォーク大が行った共和党支持者を対象とした世論調査の結果、61%が「次回の選挙にはトランプ以外の候補者を望む」と回答。さらに、次の候補者にふさわしい人物として56%がフロリダ州のロン・デサンティス知事を挙げ、トランプ氏は33%にとどまった。ただし、多くは「トランプ氏の政策を別の誰かが継いでくれる」ことを望んでおり、トランプ氏の手法への評価は今も高いようだ。

 さらにトランプ氏にとって痛手なのは、同じく22年12月に脱税などの罪に問われたトランプ氏の親族企業である「トランプ・オーガニゼーション」に有罪評決が出たことだ。今回の裁判では同社の元最高財務責任者(CFO)のワイセルバーグ氏も有罪となった。ワイセルバーグ氏はトランプ氏の側近で「金庫番」とも呼ばれてきた。検察側は今後、トランプ氏の責任も追及していく構えだ。

 これに対し、トランプ氏は「魔女狩りだ」などと反論しているが、同社には最大約160万㌦の罰金が科される可能性がある。その上、刑事訴訟で有罪となれば今後、取引を控える企業も出ることが予想されるため、経営上でも大きな痛手となることは確実だ。

 12月20日には下院の委員会がトランプ氏の過去6年間の納税記録を開示することを賛成多数で決めた。トランプ氏は頑(かたく)なに情報公開を拒んでいたが、委員会によると、内国歳入庁(IRS)は過去2年間、トランプ氏の納税に対する査察を行っていなかったという。

 このように年明け早々から、さまざまな問題に対処する必要が出てきたトランプ氏。得意の陰謀論がどこまで通用するのか。

 一方、「トランプイズム」と呼ばれる米国中心のポピュリズム的思考は、決して衰えていない。次の共和党の大統領候補と目されるデサンティス氏も「はるかに常識的なトランプ」と呼ばれるほど、その思想はタカ派の保守主義だ。これと対を成すのがサンダース上院議員に代表される左派的リベラルだが、民主党が対立候補として誰を擁立するのかにも注目が集まる。

 トランプ氏が表舞台から姿を消したとしても、「残すもの」は大きい。

(土方細秩子)

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