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2022年11月13日号
米国 3年ぶり全米学力調査で判明 コロナと人種間による「格差」
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 新型コロナウイルスのパンデミックは経済だけではなく、子どもの勉学にも大きな影響を与えた。米国では2020年春から1年以上にわたり、公立学校での対面授業が停止となり、リモート授業が継続されていた。そして今年、3年ぶりに行われた全米学力調査の結果が、その「教育の空白」の大きさを証明した。

 米国では各州が毎年、学力調査を行う。このうち小学4年生と中学2年生を対象としたものは全米で統一した形式で実施される。

 しかし、今年の結果は特に数学がかつてないほどに平均点が下落した。4年生では19年の平均点から5㌽下がって236点、中学2年生では8㌽下がって274点だった(ともに500点満点)。同時に読解力の結果も3年前から両学年とも3㌽下がっていた。

 これについて、教育の専門家は「特に中学2年は、その後のより高度な数学への入り口となる年齢であり、ここで数学能力が十分に鍛えられなければ、その後の教育の方向にも大きな影響をもたらす」と懸念を表明している。

 元々、米国の学生の基礎学力は他の先進国と比べて低めと指摘されていた。OECD(経済協力開発機構)が行っている学習到達度を見ても、18年の実績で米国は数学的リテラシーが加盟国中37位、科学的リテラシーが18位だ。ちなみに日本は数学が6位で、科学が5位だ。上位3傑はともに中国、シンガポール、マカオが占めている。

 米教育省は「今回の結果は、パンデミック以前から取り組んできた子どもの学力向上のための取り組みに対する警鐘以外の何ものでもない」と危機感を強めている。一方で全国の公立学校に対し、「コロナ補助金として配布した予算を使い、さらなる努力を続けてほしい」と呼びかけた。

 しかし、コロナ禍で明らかになった米国の経済的分断が、ここにもはっきりと表れている。今回の結果では白人と非白人の間の学力差が、かつてなく広がったことも明らかになっているためだ。

 公立学校教師によると、そもそも「自宅にリモート授業を受けるネット環境がない」、特にヒスパニック系は英語が理解できず「リモートに対応する通訳教員が不足している」などの理由により、リモート授業の出席率が悪かった。

 公立学校では低所得層の子どもに対し、無料の給食を実施している。コロナ禍前には給食を目当てに学校に来る子どももおり、これが公立学校全体の出席率を維持していた。しかし、対面ではなくリモート授業になったことで、こうした恩恵を受けられない子どもが学校に通わなくなり、結果的に「授業」への出席率も低下したという。

 今後思い切った教育改革が行われるにしても、失われた2年間の子どもの学力低下の影響は「今後10年以上にわたり続く」という分析もある。特に数学・科学的能力の減退は、近い将来の優秀な技術者育成の滞りなど、経済界にも打撃を与えることになりそうだ。

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