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2022年10月 9日号
米国 高級保養地に不法入国者が48人 仕向けたフロリダ州知事の狙い
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 9月14日、米東部マサチューセッツ州ボストンから約150㌔南方にある人口1万7000人ほどの離島、マーサズ・ビンヤード島に小型旅客機2機が着陸した。同日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』(電子版)によれば、2機は米国に不法入国していたベネズエラ人48人を乗せ、南部テキサス州サンアントニオを飛び立った。事前通告はない突然の来島だった。同島はオバマ元大統領やクリントン元大統領が休暇を過ごしたことで知られる高級保養地だ。

 2機をチャーターしたのは南部フロリダ州のデサンティス知事(共和党)だった。なぜメキシコからテキサス州に不法入国した人をフロリダ州の予算で移送したのか。デサンティス氏は17日の記者会見で「彼らのほとんどがフロリダに来るつもりであり、実際来るのだから、我々は〝サンクチュアリ(聖域)自治体〟に運んでいる」と説明した。不法入国者の取り締まりを拒む自治体のことで、民主党員が首長を担うことが多い。

 離島で起きた騒動の翌日、首都ワシントンにあるハリス副大統領の公邸前に不法入国者を乗せたバス2台が到着。テキサス州のアボット知事(共和党)がバスを手配したことを認めた声明で「バイデン・ハリス政権は過去2年近く、テキサス州の南部国境一帯を危険にさらし、圧迫している歴史的危機を無視し、否定し続けている」と正当化した。

 19日付の米紙『ワシントン・ポスト』によれば、昨年10月から今年8月までの11カ月間、米当局が身柄拘束したメキシコからの不法入国者は史上初めて200万人を超えた。9月末で終わる22年度中に230万人に達するペースだとし、昨年度の約170万人を大きく上回るとした。

 バイデン政権の国境政策に不満を持つ南部の共和党知事が不法入国者を政争の具にした格好だ。

(土方細秩子)

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