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2022年9月11日号
北朝鮮 「大胆な構想」にツンデレ対応 尹大統領「自体が嫌い」の真意
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 北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)総書記の実妹である金与正(キム・ヨジョン)・党副部長が8月18日に発表した談話の内容をどう解釈すべきか。世界の北朝鮮ウオッチャーが悩んでいる。「でたらめな夢を見るな」という談話がそれだ。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は同15日、北朝鮮が非核化措置をとれば多大な経済支援・協力があるとする「大胆な構想」を表明していた。金副部長は談話で「大胆な構想」について「実現とかけはなれた愚かさの極み」「核開発は経済協力のようなものと引き替えられない」と一蹴した。

 特に「どうか互いに意識せずに生きればというのが切なる願いである」と述べたことに関心が高まっている。この意味は「核開発・核兵器の増強を続けるから韓国は黙っていろ」という、従来の北朝鮮の立場を繰り返したものという見方が大半だ。

 実は「大胆な構想」は2008年に大統領になった李明博(イ・ミョンバク)氏が打ち出した「非核・開放・3000」という対北政策にとても似ている。

「何かをしたら、こちらがしてあげる、といった言い方を北朝鮮は最も嫌う」(中国の北朝鮮研究者)。当時も北朝鮮は強く反発。結果、李明博政権では武力衝突が発生したこともあり、南北関係はとても険悪だった。そのため北朝鮮らしい、上品とは言えない言い回しで尹大統領を非難したかっただけともみられる。

 また、「北朝鮮は南北統一を諦めたということではないか」との声も出ている。ただ、北朝鮮は今年5月の就任以来、尹大統領に対しては無視を決め込んでいた。それが反応を示したことは「愛情を恫喝(どうかつ)で表現する北朝鮮らしい、ツンデレのアプローチではないか」という見方もある。

 食料や生活必需品、エネルギーなど、ないない尽くしの北朝鮮経済。金副部長は「尹錫悦という人間そのものが嫌い」とまで言い放った。しかし、実は「助けてほしい」「かまってほしい」というシグナルか。

(浅川新介)

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