「サル痘の世界的なアウトブレーク(突発的発生)は『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』に当たると決定しました」
世界保健機関(WHO)のテドロス事務総長は7月23日、記者会見でそう述べ、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言しましたが、アウトブレークが今のところ集中しているのは、男性とセックスをする男性、特に複数の相手がいる人です」と補足した。
テドロス氏は27日、「世界78カ国がWHOに報告したサル痘の感染者は1万8000人を超えました」と説明し、その7割はヨーロッパ、25%は米州とした。死者は世界で5人という。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国の感染確認者は29日現在、5189人。5月に初めて確認された当初は「十分にコントロールできる」と楽観的な見方が多かった。しかし、6月以降に感染が急拡大し、乳幼児2人の感染が確認されるなど、事態が深刻になってきた。CDCのデータによれば、感染確認者が最も多いのはニューヨーク州の1345人。2位はカリフォルニア州の799人だ(29日現在)。
CDCのウェブサイトによれば、〈サル痘の感染に特化した治療法はない。しかし、サル痘と天然痘のウイルスは似ているため、サル痘の感染を予防し、治療するには、天然痘用の抗ウイルス剤やワクチンを使用し得る〉。ベセラ保健福祉長官は27日、デンマーク製の天然痘用ワクチン「ジンネオス」78・6万接種分を確保し、「自治体や州政府が可及的速やかに入手できるようにする」と声明を出した。同ワクチンは接種を4週間の間隔で2回受ける必要がある。
しかし、28日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』は〈供給量が乏しいことから、コロラド州、サンフランシスコ市、首都ワシントン、ニューヨーク市などは2回目の接種を遅らせる苦渋の選択をした〉と伝えている。
(土方細秩子)