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2022年4月10日号
韓国 尹錫悦次期大統領に早速難題 公約した大統領府移転が物議
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 5月に就任する韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)・次期大統領だが、早速問題にぶつかっている。大統領選中の公約の一つだった「大統領府移転」で、現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領側から強い反対に遭っているのだ。

 韓国大統領府は「青瓦台(チョンワデ)」と呼ばれ、李朝時代の王宮だった景福宮(キョンボックン)の裏手にある。かつては高麗朝の王族が住んでいた地域で、日本の植民地時代の1939年に朝鮮総督官邸が建設された。48年に大韓民国が建国されると、初代大統領の李承晩(イ・スンマン)氏がそのまま官邸・公邸として利用した。当時は「景武台(キョンムデ)」と呼ばれ、60年に当時の尹潽善(ユン・ボソン)大統領が青瓦台に改名した。

 尹錫悦氏は大統領府移転を「青瓦台は帝王的な権力の象徴」「既存の政治権威を解体し、国民とのコミュニケーションも促進できる」とし、青瓦台から約6㌔南の竜山(ヨンサン)区にある国防省庁舎に移転する計画だ。

 ただ、この移転に対し、世論は反対が過半数を占め否定的だ。また、文政権側も「国防省や合同参謀本部の移転期間中、安保上の空白が生まれる」「首都圏防衛システムを急激に変更できない。無理な計画」と強く反対。選挙後に予定されていた尹氏との会談を拒否している。国防省も「移転には早くとも4週間はかかり、任期開始には間に合わない」と及び腰だ。

 一方、次期与党となる「国民の力」は「北朝鮮が何発もミサイルを発射しても融和的な対応だった大統領府が今になって安保を理由に反対するのはおかしい」と反論する。

 また、現与党「共に民主党」側からも「何でも反対という姿勢は、逆に民心が離れる」「大統領は後任が働きやすいようにすべき」と指摘。6月にある統一地方選の票を意識した反応が出ている。

 尹氏側は「政権引き継ぎ委員会」を設置し、現政権からの引き継ぎを行っている。しかし、移転問題がしこりとなって、スムーズにいかなくなる可能性が出てきた。

(浅川新介)

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