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2022年2月27日号
金融 メタ、デジタル通貨構想を断念 世界の中銀が猛反発したワケ
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 米IT(情報技術)大手のメタがデジタル通貨構想「ディエム」を断念した。スイスを拠点とする同構想の運営団体「ディエム協会」が1月31日、関係する知的財産権などを銀行持ち株会社の米シルバーゲート・キャピタルに売却したと発表した。メタはフェイスブックの新社名。

 なぜ断念したのか。同協会の発表はこうだ。

〈ディエムの設計に対し、米連邦政府の規制当局は好意的な反応を示しました。それにもかかわらず、当局と対話を深めた結果、この構想を進めることはできないことが明白になりました〉

 フェイスブックがデジタル通貨構想を明らかにしたのは2019年6月。当時は「リブラ」という名称で、「20年前半に運用を開始する予定」と発表していた。

 しかし、その直後から主要国の規制当局などから反対論が噴出した。トランプ大統領(当時)は「フェイスブックのリブラ〝仮想通貨〟には信用や信頼性がほとんどない。フェイスブックや他の企業が銀行になりたいのなら、銀行免許を申請し、全ての銀行規制に服すべきだ」とツイート。米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「リブラはプライバシー、資金洗浄、消費者保護、金融の安定に関し、深刻な懸念がある」と封じ込めに躍起になった。

 銀行アナリストが言う。

「中銀は紙幣を発行して国債などの資産を買い入れ、利益を上げています。FRBは昨年、純利益1078億㌦(約12兆4500億円)のうち、1074億㌦を国庫に納付しました。この通貨発行益がなければ金融システムを維持するコストを賄えません」

 つまり、ディエムが国の枠組みを超えて流通すれば、既存の金融システムを破壊しかねない――。そんな危機感が高まり、最終的にメタが白旗を上げた格好だ。

(森岡英樹)

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