武漢ウイルス研究所から流出したのか――。新型コロナウイルスの発生源を巡り、「陰謀論」とされてきたこの説が再浮上している。
きっかけは5月24日付の米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』に載った記事。中国湖北省武漢市で感染が広がる前の2019年11月、同研究所に所属する研究者3人が〈病院での治療が必要になるほどの体調不良を訴えていたことが分かった〉と報じた。
2日後、バイデン大統領は声明を発表。「人が感染した動物に接触したためか、研究所の事故か」を3月から情報機関に調べさせていたが、調査態勢を増強して90日以内に報告するよう命じたとした。英紙『サンデー・タイムズ』は5月30日、流出説について〈英情報機関は「あり得る」と考えている〉と報じた。
風向きが変わった事情を明らかにしたのは6月2日付の米誌『ニューズウィーク』電子版。〈証拠を探り当てたのは、ジャーナリストでもスパイでも科学者でもない。アマチュアの「探偵」たちだ〉とし、調査した複数のネットユーザーの談話を載せ、流出を信じるに至った経緯を細かく伝えた。同研究所の研究員が書いた論文のリンクなどを公表し続け、著名なウイルス学者も認めるようになったという。他の科学者も賛同し、5月14日付の米科学誌『サイエンス』に同研究所の徹底調査を求める公開書簡を載せた。
米大統領顧問を務めるファウチ国立アレルギー感染症研究所長が早くも昨年春、「研究所から流出した疑いがある。ウイルスは不自然に見える」と語っていたという話も飛び出した。6月6日放送の米CBSテレビの番組で明かしたのは、米食品医薬品局のゴットリーブ前長官。トランプ政権高官から聞き、その後、再確認したとする。トランプ前大統領の「中国ウイルス」発言の背景にファウチ氏の考えがあった可能性もある。
(土方細秩子)