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2021年5月23日号
韓国 トップ死去を機に支配を強化 サムスン李一族の2兆円相続
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 2兆円を超える遺産の行方は――。韓国最大の財閥・サムスングループのトップで、2020年10月に78歳で死去した李健熙(イ・ゴンヒ)会長の遺産の行方が焦点になっていたが、遺族間での話し合いで一区切りつきそうだ。

 李会長の遺族は、妻の洪羅喜(ホン・ラヒ)氏と現在同グループのトップで長男の李在鎔(イ・ジェヨン)・サムスン電子副会長、娘2人の4人。結果、4人が相続税として計約12兆ウォン(1兆1750億円)を支払い、1兆ウォン(980億円)を医療事業へ寄付、国宝級の美術品なども国家へ寄贈することになった。

 李会長の死後、グループ企業の本人所有株式の行方が焦点となってきた。莫大(ばくだい)な相続税額を納付するため、相続後に売却するのか。注目を浴びたのは株式の相続次第で、李一族のグループ支配が揺らぐ可能性があったからだ。

 実は、サムスンの各企業は株主の大半は海外投資家ら一族以外が所有する。だが、グループ内の主力企業であるサムスン生命やサムスン電子、サムスン物産の株式を絶妙な配分で李会長や一族が保有することを通じて、グループを支配してきた。

 今回、李会長が保有していたグループの金庫番・サムスン生命の株式の半分を、李副会長が引き継ぐ。一方、他の主要企業の株式は法定比率に従って分配されることで、李一族のグループ支配が従前より強固なものとなった。

 また、サムスン電子だけで約8800億円という相続税負担は、4人がそれぞれ負担することになった。韓国全体で納付される1年の相続税額全体の3〜4倍の規模だ。

 中興の祖の父・李会長が残した問題の解決にめどをつけたが、サムスンは大きな難関が立ちはだかる。李副会長は不正資金問題で収監中だ。事業は半導体関連が好調だが、生産拡大や次世代の高付加価値品開発で後れをとっている。李副会長に恩赦を求める声が財界から出ているほどだが、トップ不在の経営には不安が拭えない。

(浅川新介)

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