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2021年5月 9日号
韓国 元慰安婦訴訟で賠償請求却下 「最悪」日韓関係に変化の兆し
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 最悪とされる日韓関係に深く刺さったトゲである慰安婦問題が、韓国側で動き出した。

 ソウル中央地裁は4月21日、日本政府に損害賠償を求めた元慰安婦らの訴えを却下した。「主権免除」という国際法上の原則を考慮すれば、今回の提訴は適切ではなく、韓国の裁判所では判断できないということだ。主権免除とは、主権国家は他国の裁判権に服さないという原則だ。

 ところが、同じソウル中央地裁は1月、別の元慰安婦による訴訟で「日本政府の行為は反人道的な犯罪であり、主権免除は適用されない」とし、原告1人当たり約970万円の賠償を命じている。

 主権免除に従って「国際法により訴訟は無効」と主張してきた日本政府は当然、これに強く反発。こういった判決には「三権分立であり、司法の判断に従うほかない」という韓国政府とぶつかり、日韓関係は悪化したままだった。

 ただ、これまで消極的だった文在寅(ムン・ジェイン)政権はこの1年ほど、日韓関係を改善しようという姿勢は見せていた。しかも判決前日には、同地裁が1月の判決に関して、原告が訴訟費用の確保のために求めた日本政府の資産差し押さえを、認めない決定をしていたことが分かった。「三権分立」といいながらも、時の政権の意向に影響されやすいのが韓国司法だ。同じ性格の訴訟なのに、判断が大きく分かれるのも十分にあり得る。

 ただ、今回の判決を受け、実際に文政権がどう動くのかが問題だ。日本はこれまで2015年の「慰安婦合意」で決着済みという姿勢を崩さない。この方針も、世論から一定の支持を受けている。

「被害者中心主義」を掲げて司法判断さえ〝擁護〟してきた文政権が、日本にも受け入れ可能なものを提案できるのか。わずか1年の任期を残すだけとなった文大統領に、そこまでのやる気はあるのだろうか。

(浅川新介)

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