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2021年5月 2日号
北朝鮮 「コロナ」で五輪不参加を表明 真相は「消極外交策」の一環か
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 北朝鮮が4月6日、今夏の東京五輪への不参加を表明した。コロナ禍の中、選手を守るためという。それはあるだろう。しかし、他の思惑も、はっきりと見えている。

 同日朝、日本政府は北朝鮮への経済制裁の2年間延長を閣議決定した。この動きは北朝鮮も知っていたはずで、その対抗策として五輪不参加を打ち出したとも思える。

 不参加は北朝鮮の「朝鮮体育」というサイトで、同国オリンピック委員会が3月25日に開いた総会で決定したと発表した。しかし、総会の概要は翌26日に報道されており、その際には五輪不参加という内容はなかった。このタイムラグから、対抗策であることが強くうかがえる。

 これまで「東京五輪が日朝対話のきっかけになる」との希望的観測があった。また、韓国は五輪を利用して2018年の自国開催だった平昌(ピョンチャン)冬季五輪の再来を目論(もくろ)んでいた。当時、北朝鮮は選手・文化交流団を韓国に派遣し、同年中に南北首脳会談、米朝首脳会談が実現したためだ。

 ただ、今年1月の朝鮮労働党第8回党大会では「それ相応の成果が見込めないと、対話を自分たちから提案しない」ことを表明した。消極的な外交を取るということだ。

 そう考えると「消極的な外交」の一環として、五輪不参加を表明したとも考えられる。実はコロナ禍前は、北朝鮮側も五輪に参加する意欲は満々だった。この数回、柔道や重量挙げなどでメダリストを輩出し、国威発揚の一環として利用していたためだ。

 4月8日、超党派の日朝国交正常化推進議員連盟(衛藤征士郎会長)が、日朝間の懸案解決と国交正常化の実現のため「訪朝の用意がある」とする決議を採択し、13日に菅義偉首相に申し入れた。日本から北朝鮮へのシグナルだ。しかし、北朝鮮関係者は「我々に何の得にもならない」とにべもない。党大会での方針通り当面、北朝鮮には対話という選択肢はないのだろう。

(浅川新介)

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