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2021年4月25日号
韓国 ソウルと釜山で野党系が圧勝 文大統領はレームダック化か
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 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の指導力が急速に衰退しそうだ。任期は来年3月までの約1年だが、これで一気にレームダック化が進むだろう。

 4月7日に行われたソウルと釜山(プサン)の市長選で、最大野党「国民の力」候補がともに当選した。ソウルは呉世勲(オ・セフン)候補が得票率で57・5%を、釜山は朴亨埈(パク・ヒョンジュン)候補が62・7%を獲得。与党候補との得票率の差が、それぞれ約18、28ポイントという圧勝だった。

 今回の選挙はともに、セクハラ疑惑が浮上した現職の自殺(ソウル)と辞任(釜山)によるもので元々、与党には不利な情勢だった。それでも、この差での敗北は想定を超えるもので、与党側は沈痛な表情を隠せずにいる。

 逆に、2016年以降の負け戦続きだった「国民の力」の支持基盤となる保守層には、久々の大勝となった。前出のセクハラという醜聞に加え、政府高官による土地不正取引や子弟の不正入学といった与党側の失点が、現政権への批判票を集めたようだ。

 今後の焦点は来年3月の大統領選だ。与野党ともに候補と目される人物はいるが、どれも決定打に欠けている。野党側は現政権と対立した前検事総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を擁立する動きが一部ある。だが、本人の意志がはっきりしない。与党「共に民主党」も日本通で知られた李洛淵(イ・ナギョン)前代表が候補の名前に挙がっているが、当選までの力が現在はない。

 17年の就任以降、60〜70%台の高支持率を続けていた文政権。一時は「向こう10年以上は保守政権はあり得ず、現政権のような進歩(革新)政権が続く」と豪語する声も聞こえていた。しかし、最大公約だった経済面での施策が振るわず。首脳会談を行ったものの北朝鮮との関係は改善せず。さらにはスキャンダルが続き、最近の支持率は30%台にまで落ち込んでいた。

 任期残り1年で文大統領がやれることは少ない。韓国政界は、与野党ともにリーダー不在の非常に不透明な状況が続きそうだ。(浅川新介)

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