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2021年4月18日号
北朝鮮 ミサイルはバイデン政権より恒例の米韓軍事演習の対抗か
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 北朝鮮が3月25日にミサイル2発を発射したことをめぐり、朝鮮半島情勢の先行きに注目が集まり始めた。北朝鮮は「新型戦術誘導弾を発射した」と公表した。ほぼ1年ぶりの試験発射となった。

 大方の見方は「米国への当てつけ発射」だ。今年1月に発足したバイデン政権の北朝鮮政策に事前に警告するために発射したというものだ。

 バイデン大統領は今回の発射を「国連安全保障理事会決議違反」と指摘し、追加制裁が同理事会で話し合われた。だが、中露は反対している。

 こうした見方は妥当だが、理由の全てではない。北朝鮮からすれば、3月に何らかの軍事的行動をするのは恒例行事となっているためだ。これは、毎年3月に行われる米韓合同軍事演習への対抗だ。今年も3月8日から行われた。

 時には突発的にみえる北朝鮮の行動だが、過去のミサイル発射や核実験などは、事前に決められた予定にしたがって、忠実に行われる。今回の発射も、決められた開発段階における発射であることは間違いない。

 また「合同軍事演習は、規模の大小を問わず、わが国にとって大きな負担」(北朝鮮関係者)。隣で軍事演習をしているのに、自軍が黙っているわけにもいかず、対抗の演習などで軍隊を動かすのは経済的負担が大きいのだ、という。南北、米朝協議などの話し合いが行われるたびに、北朝鮮が「軍事演習の中止」を求めるのは、もちろん安保上の問題もあるが、この経済的問題のほうがホンネなのだ。

 今回のミサイル発射後、北朝鮮は当面、事態を静観するだろう。北朝鮮は年初の第8回党大会で、米韓が北朝鮮が傾聴するに値する条件を出さないと交渉などに出ないことを明言している。それまでは北朝鮮から行動しないということで、この方針を動かすことはないだろう。朝鮮半島情勢は今、韓国と米国側にボールがある。

(浅川新介)

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