〈テキサス州民は最初、電力を失った。今は飲み水がなくなっている〉
2月17日、そう書き始める記事を載せたのは政治メディア「テキサス・トリビューン」。10日から州全域を記録的な寒波が襲い、北部アマリロ市では一時、華氏マイナス11度(摂氏マイナス23度)まで下がった。主要電源の天然ガスを供給するパイプラインは凍結し、州内約1000万世帯の4割が停電に苦しんだ。スーパーマーケットは閉店し、暖を求める人がホテルに殺到し、宿泊料は急騰した。
さらに〈厳寒が続く中、水道管の破裂を防ごうとした人々が、水を流し続けた。その結果、貯水池が危険水位に近づき、各地の自治体は17日、飲用に適さなくなっていると警告している〉(前出の記事)
水道当局は「水道水を煮沸してから飲用するように」と指示。州環境基準委員会によると、26日現在、約70万人が影響を受けている。
なぜ米石油産業の中心地で大停電が発生したのか。大きな理由は電力網が州外から電力を融通しにくい構造になっていることだ。AP通信が21日に配信した記事によると、〈テキサスの電力網は完全に孤立しているわけではなく、米東部とメキシコの電力網との間で電力を融通し合う小規模な接続地点があるが、少ない〉という。
電力需給が逼迫(ひっぱく)したことで、一部事業者の電気料金は急騰。インターネットには、明細書の写真をアップロードし、「わが家の電気代は5日間で5000㌦(約53万円)を超した」などと書き込むユーザーが続出した。ヒューストン市のターナー市長は21日、テレビの取材に「州政府が負担すべきだ」と話した。
未曽有の寒波は、新型コロナウイルスの対策でただでさえ疲弊する州の財政をさらに悪化させるのは必至だ。
(土方細秩子)