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2021年2月21日号
韓国 北朝鮮に原発をプレゼント? 南北首脳会談の〝密約〟が浮上
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 北朝鮮に原発をプレゼントするつもりだったのか――。韓国の文在寅(ムン・ジエイン)政権に非難の声が高まっている。2018年4月の南北首脳会談の際、北朝鮮が非核化を約束すれば、見返りに韓国が原発建設を支援するとの〝密約〟があったのではと疑われているのだ。

 事の発端は、韓国・産業通商資源省が「北朝鮮での原発建設推進」という文書を作成。この文書を文大統領が金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長(当時)に手渡したというものだ。

 同省側は「数ある北朝鮮支援のオプションの一つで、机上のアイデア」と主張。大統領府も「事実ではない」と反論している。ところが、この文書のファイル名をポーランド語で「北」と名付けたり、後に職員が深夜に庁舎に行き、関連ファイルを削除するという隠蔽(いんぺい)さながらの行動が発覚。疑惑が増幅している。

 文政権は韓国国内では「脱原発」を謳(うた)い、新規原発建設の停止や既存原発の廃炉を推進しているのに、北朝鮮に原発提供という矛盾した行動が批判の的だ。すでに国内原発の廃炉を文大統領は指示したが、この指示が該当法律に基づいていない違法な指示だったという点も露(あら)わになった。

 さらに文政権の北朝鮮への低姿勢ぶりに、保守・中道層から強い反発が生じている。北朝鮮が20年6月に南北共同連絡事務所を爆破した件や、同年9月に黄海上で韓国人が射殺された事件の処理をめぐっても、現政権の対応が弱腰だったことへの不満が、一気に爆発した状況だ。

 かつて1990年代に、北朝鮮が非核化の見返りに、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)が軽水炉原発の建設を行ったことがあるので、原発建設自体は前例があるものだ。ただ、現在の情勢は当時とは違い、またこの計画も北朝鮮が非核化の約束を反故(ほご)にしたためストップしている。あまりにも短絡的な対北政策に、韓国国民はあきれている。

(浅川新介)

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