韓国を代表する財閥企業・サムスングループのトップでサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が拘束・収監された。朴槿恵(パク・クネ)・前大統領に対する贈賄罪などに問われ、懲役2年6月の実刑判決を受けたためだ。一度は執行猶予付きの判決が出て釈放されていた李氏だが、1月18日に実刑判決が出ると、そのまま法廷で拘束された。
これを受け、サムスンは李氏の「獄中経営」の下に入ることになった。獄中経営とは、おそらく韓国でのみ使われる言葉だろう。財閥トップが獄中に入ると、役員らが拘置所などに赴き、経営上の判断や指示を仰ぐことだ。
李氏本人も2017〜18年の1年ほど収監された。自身の父親であり、昨年亡くなった李健熙(イ・ゴンヒ)会長も獄中経営経験者だ。サムスンだけでなく、他の主要財閥のトップも贈賄などで拘束され、獄中経営を行っていた例がある。
李氏が収監されたソウル拘置所は、特に政財界の要人が拘束されると入獄する場所として有名だ。韓国メディアの報道によれば、李氏が入っている独房は特に設備や造りが貧弱で劣悪とされ、24時間監視のカメラの下、トイレも便座がないものだという。前回収監された際にも李氏は、この独房に一度入れられたようだ。「財閥など金持ちも特別待遇の部屋がある」と韓国内で揶揄(やゆ)する声も上がっているが、事実はそうでないようだ。
一方、「いくら獄中経営といって自ら指示ができるとしても、面会人の人数や時間も厳格に決められ、指示・説明などには全く不十分。トップの経営がきちんと機能するかは疑問」(獄中経営を行った財閥の元役員)なのが実情だ。
サムスンは故・李会長の相続問題という内部的な大問題を抱える。一方で、半導体など自社の成長部門への投資など経営上の重要判断も迫られている。3代目経営者として「これから」という時に収監された李副会長。獄中経営には不安が山積している。
(浅川新介)