「今の状況でトランプ大統領に当社サービスの利用を認めることのリスクはあまりに大きいと考えられる」
1月7日、そう発表したのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手のフェイスブック。同社が運営するSNSをトランプ氏が利用する権限を無期限で停止したのだ。ツイッターも「永久停止」した。理由は6日の米連邦議会議事堂への乱入事件をトランプ氏が扇動したことだ。
8日付の米紙『ロサンゼルス・タイムズ』は主要SNSがトランプ氏を排除したことで、「パーラー」など新興SNSが「トランプネット」になるかもしれないと報じた。しかし、アマゾン、アップル、グーグルは「パーラー」を締め出し、事実上アクセス不能になった。
さらにツイッターはトランプ支持者が多いとされる「Qアノン」という陰謀論に言及するアカウント7万件以上を停止。「これまでSNSが陰謀論を増長してきた」と批判が高まり、著名投資家のクリス・サッカ氏はツイッターとフェイスブックの最高経営責任者に向け、「あなたたちの手は血で汚れている。過去4年間、あなたたちはこのテロを正当化してきた」と、憤りをぶちまけた。
一方、ヨーロッパではSNSによる利用停止措置を批判する声が上がっている。ドイツのメルケル首相はツイッターによる措置を問題視。同首相の報道官は11日、「根拠とする法律は何か。SNS運営会社の行動について今後、どんな影響を及ぼすか」と、企業が表現の自由を制限することに疑問を呈した。フランスのルメール経済・財務相、英国のハンコック保健相も批判。ロシアの野党指導者、ナワリヌイ氏は「(ツイッターの措置は)世界中の抑圧的な政権が悪用する前例になる」とし、今後は「トランプさえもツイッターからブロックされたのだから当然だ」とする風潮が広がることを懸念した。
SNSに対する政府規制へと向かうのか。
(土方細秩子)