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2021年1月31日号
北朝鮮 軍事面では「既定路線の維持」 「権威」「経済」集中した党大会
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 1月5日から12日まで行われた北朝鮮・朝鮮労働党の第8回党大会。「核戦争抑止力をより強化し、最強の軍事力を育てることに集中する」と金正恩(キム・ジョンウン)・党委員長が言及したことで「軍事拡張路線が強まる」との見方が支配的だ。

 はたして、そうか。今回は特に「火星砲系列の中距離・大陸間弾道ロケット(ミサイル)」や「北極星砲系列の水中・地上発射弾道ロケット」、「超大型水爆」など具体的な兵器名をわざわざ挙げたことが、そのような印象を与えたのかもしれない。

 しかし、これらは2012年の金正恩政権以降、常に北朝鮮が誇示し開発してきたものばかりだ。つまり、軍事面では「既定路線の維持」ということだ。

 では、今回の党大会の目的は何か。一つは、労働党の組織改編による事業推進の効率化と、金委員長の政治・権威的地位の強化。そして、経済の立て直しの二つだ。

 前者は金委員長を「総書記」としたことが象徴的だ。故・金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)氏も使用した肩書で権力の歴史的重みを与え、国内引き締めを狙う。同時に、幹部の世代交代を大胆に進め、党中央委員会から末端党組織に至るまで組織の簡素化を決定し、政策の速やかで効率的な実行をもくろんでいる。

 深刻なのは経済だ。大会開催中に「部門別協議会」が開催されたが、ここでは軍事の話はまったく出ず、経済回復や活性化をどうするかという議論に集中したという。

 経済制裁にコロナ禍、昨年の水害復旧という「三重苦」がネックとなっている北朝鮮の経済活動は、19年基準の3割程度にまで落ち込んでいる。国民の生活も悪化する中、金正恩氏が強い危機感を持っているのは間違いない。しかし、国内を固めても経済の活性化にはつながらない。核を手放さなければ制裁は続く。結局、場当たり的な弥縫策(びほうさく)のみ、ということだ。

(浅川新介)

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