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2021年1月24日号
韓国 収監中の大統領経験者の赦免求める「次期有力候補」の思惑
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韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期は残り1年半。再任はないため、次期大統領選に向けて韓国政界が騒がしくなり始めた。そのためか。新年早々、前首相で革新系与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、収賄などで実刑を受けて収監中の李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領を「赦免するよう文大統領に進言する」と言ったのだ。

李、朴氏とも政治的には保守派で、進歩派の李代表は立場を異にする。ただ、李代表は幅広い人脈を持ち、中道的な性格を持つとの評価がある。前職の新聞記者で、東京特派員も経験した知日派だ。

与党からは「罪を犯したことへの反省も十分でもないのに何事か」との反発が出ている。とはいえ、韓国で大統領経験者の収監と赦免は珍しくない。実際に全斗煥(チョン・ドウファン)、盧泰愚(ノ・テウ)の両氏は1980年の光州事件などで断罪され、大統領退任後に収監。その後は特赦で釈放されている。

李代表の発言には二つの意図がある。一つは、コロナ禍の対応や高騰する不動産対策、公約だった雇用増がうまくいかず、支持率が30%台へ急落した文大統領の政治力を強化しようというものだ。もう一つは、李代表自身の大統領選に向けた支持拡大だ。

韓国は「土地神話」が強く、不動産投資は財テクの最たるもの。半面、高騰しすぎて住宅を持てない国民からは大反発を呼び、現政権を直撃している。コロナ禍での感染者増も追い打ちをかける。

そのような状況で、次期大統領との呼び声も高い李代表は、中道や中道右派の支持を確保しておきたい。その一手として、保守派の李、朴両氏に気遣ったと見られている。

赦免は「適切な時期に」文大統領に進言すると李代表は言う。中道・保守層への支持拡大がうまくいくか。特に文政権になり、保革対立が国民に浸透、双方には深い溝ができている。そこを埋めて大統領になるという李代表の野心が実るかどうかは、まだ不透明だ。

(浅川新介)

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