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2020年12月13日号
米国 4年前のベストセラーが映画化 米メディアは「受賞狙い」と酷評
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映画「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」が11月24日、動画配信サービス「ネットフリックス」で公開された(日本の映画館では13日公開)。原作は米国で2016年に出版された『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)。同年の大統領選で勝敗を決めた米中西部などの「ラストベルト(さびついた工業地帯)」に住む人々を描いたベストセラーだ。

監督のロン・ハワード(66)は01年に「ビューティフル・マインド」でアカデミー賞監督賞を受賞した大物。俳優の顔ぶれも豪華だ。主人公で原作筆者でもあるJ・D・ヴァンス氏(36)を演じたのは若手のガブリエル・バッソ(25)、主人公の祖母役はベテラン女優のグレン・クローズ(73)、母親役も大作に出演歴が多いエイミー・アダムス(46)。

期待が高かったが、米メディアは酷評している。11月10日付『ロサンゼルス・タイムズ』紙は、原作の刊行当時、〈党派を問わず高く評価された。とりわけリベラル派は、あまりに生々しく、深く見抜いたこの話に驚きをもって同情し、受け止めた〉と紹介。保守派は筆者が逆境をはね返して海兵隊に入ってイラクで戦い、名門エール大法科大学院に進んだ経歴を好んだという。

一方、映画については、〈(原作にあった)政治的な部分はあらかた消え失せ、大きな目標を探し求めて、アカデミー賞受賞作を紹介する際の名場面を切り張りしたようなシーンが続く〉と、わざとらしさが鼻につくとする。

24日付の『アトランティック』誌(電子版)は〈主人公は逆境の中で苦労するが、最終的には希望が見え、成功するというアカデミー賞受賞作品にありがちな展開。今年最悪の映画の一つだ〉と評した。

4年前の大統領選以来、ハリウッドはトランプ勝利の理由を探る映画を製作してきた。本作はその最高峰となるべきだったが、受賞狙いのあまり、原作の輝きを見失ったようだ。

(土方細秩子)

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