サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2026年9月27日号
"落選"は気の毒だけど...「ゴリラ」の名前を政治に使うなよ!
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牧太郎の青い空白い雲/1036 

 大昔、「カルタゴ」(ラテン語のつづりはCarthāgō)という国があったらしい。紀元前、アフリカ大陸の北岸を中心に地中海貿易で栄えた国。チュニス湖東岸を拠点としていた。現在のチュニジア共和国の北側にあたるらしい。

「カルタゴ」は造船技術に優れ、貿易で大儲け。地中海南岸に本拠地を持つ大国になり、地中海北側にあるローマ(共和政)と競い合った。「ローマ」はイタリアの首都だから、小学生の頃から知っていたが......「カルタゴ」のことはほとんど知らなかった。

 以来、この「名も知らぬ国」に興味を持ったのは......ゴリラが大好きになってしまったからだ。

 紀元前450年ごろ、この国には〝最古の冒険家〟みたいな「ハンノ」という人物がいた。地中海を越えてアフリカ大陸西岸部に至る大航海を遂行。いろいろな出来事に出合う。探検隊はそれを記録している。その一つに「ほとんどが女性で、体は毛深く、通訳が Gorillae と呼んだ野人の集団に遭遇した」とあるのだ。

 彼らが遭遇した「野人」はゴリラなのか、別の類人猿なのか、サルなのか、それとも人間なのか?......それを想像していると、何となくワクワクした。

 何しろ、ゴリラは大きい。(種や性別にもよるが)身長12518㍍ 、体重100270 ㌔、両腕を広げた幅は26㍍に達するそうだ。

 デカい。人間より強い!かもしれない。

 ゴリラの勉強を始めた。

 歴史的には......例のハンノが持ち帰ったゴリラの雌の毛皮は、300年後の紀元前146年のポエニ戦争の終結時に、ローマが「カルタゴ」を破壊するまで保管されていた。宝物だったという。

 生物学的には......ヒトもゴリラも霊長目の一員。猿類なのだ。

 よく似たオランウータン属は他のヒト科の種(ヒト、ゴリラ、チンパンジー)とは1930万年から1570万年前に分岐した......。余計なことまで勉強したが、そのうちにゴリラを何となく「身内」みたいな存在と感じた。

 東京の恩賜上野動物園に「ハオコ」や「モモコ」、その子どもたちを見に行った(日本にはゴリラは20頭ぐらいしかいないらしい)。

 ゴリラはオレの「友達」?

 ところが8月半ば、先の衆院選に落選した川内博史氏、阿部知子氏、平岡秀夫氏の3人が記者会見。新しい政治団体「護憲リベラル共生」を設立すると言うのだ。結構なことだが......「略称は〝ゴリラ〟とする。力強く地に足をつけて平和を守るという意思を込めた」というのだ。

 確かに、ゴリラは二足で立ち、大勢で一緒に歩くけど......何でもかんでも......ゴリラまで利用する政治家サン、また落選するぞ!

 ◇まき・たろう 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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