牧太郎の青い空白い雲/1035
明治生まれの母は、布のシワを伸ばすのに金属製の「こて」を使っていた。電気アイロンは大正4(1915)年ごろに〝発明〟されていたが......値段がめちゃくちゃ高い。母には手が出なかった。
それが戦後(多分、昭和20年代後半と思うが)、「松下電気器具製作所」(現パナソニック)の「スーパーアイロン」なるものを知った。昭和30年ごろには、水を熱して蒸気を出す「スチームアイロン」が登場。母は「こんな便利なものがあるんだ」と大喜びだった。
当時、アイロンは間違いなく「女性の味方」だった。ところがである。(「死語」と言うわけではないが)久しぶりに「アイロン」という言葉に出合った。
高市早苗首相が最近、Xで「多忙な毎日」について概(おおむ)ねこう訴えた。
「就任以来、睡眠時間は0~3時間が常態化している。平日は公邸に戻った後、風呂掃除、洗い物、洗濯などの家事に追われ、深夜から明け方まで資料読みに追われている。3連休の最終日は、久々に5時間睡眠がとれ、ハンカチやインナーの大量のアイロンかけ、お裁縫を一気に処理した」という。
忙しいのは分かるが......。本当にアイロンをかけているのか?
というのも......令和の時代、いや、もっと昔から衣類の素材の多くが、形を保つ力が強く、洗濯後もシワが付かないので「アイロンがけ」は不要になりつつある。
ポリエステルは化学繊維の中で最もシワに強く、乾きやすい。ナイロンは弾力性があり、型崩れしにくい。ニット素材は編み物のため織物よりシワになりづらい。だから、知人女性の多くが「アイロンを使うのは年に数回だわ」と話す。
高市さんの「大量のアイロンがけ、お裁縫を一気に処理した」というのは......失礼だが「嘘(うそ)っぽい」。
「睡眠時間0~3時間」も理解できない。
当方、事件記者だった20歳代後半、確かに「睡眠3時間」ということもあったが、昼間、捜査本部がある警察署のソファを借りて何時間も居眠りした(笑)。
医学的には、6時間未満の睡眠でも眠気を感じず、日中は精力的に活動する「ショートスリーパー」なる人物も存在するが......。これは超少数。高市さんは「居眠り」もせず「寝ない日」もある!と言うから、(昭和時代の表現で、申しわけないが)〝超々スーパーレディー〟ということになる(笑)。
支持率が幾分下がり始めて、高市さんは「頑張ってる感」を演出しているのだろうが......。「嘘っぽい」のはまずいゼ!
高市さんは「アイロンがけが下手で時間がかかる」とエピソードまで披露しているが......。何か「計算して可愛く見せている」ような感じ。
はっきり言わせてもらうが、知人女性は「アイロンに上手、下手なんてないわよ!」と笑っていた。
.....................................................................................................................
◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある