牧太郎の青い空白い雲/1027
大学時代、恩師の吉村正先生に「政治学の勉強より役に立つのは、自動車免許だぞ!」と言われた。
『現代政治の機能と構造』(前野書店、1963年)などの著者で、早稲田大第一政治経済学部長だった先生が「早く免許を取れ!」と言う。先生の言った通り、就職した毎日新聞の新潟支局では「運転」が大事な仕事。ジープを運転して「現場」に駆けつける。
2年先輩の鳥越俊太郎さんは運転免許を持たないので苦労していた。その後、鳥ちゃんは海外勤務地で免許を取り、帰国後、日本の免許証に切り替えて大活躍。テレビの世界に転身。有名人になった。ともかく「勉強より自動車免許」の教え?は当たっていた。
常に携帯している免許証を見ると......。「免許の条件等」という項目がある。
【眼鏡等。中型車は中型車(8t)に限る 左アクセルのAT車でアクセル・ブレーキは左足操作の中型車(8t)と普通車に限る】
実は47歳の時、脳出血で倒れた。9カ月入院。この時、若い医師が「退院したら免許を更新すればいい。右手右足は動かないけど......」と言うので従った。だからこんな〝特別な条件〟がついた。
しかし、免許はもらったけど実は......運転しようと思っても怖くてできなかった。手元の免許証には【平成27(2015)年11月10日まで有効】とあり、この日をもって「免許とお別れ」をした。
5月初め、大学時代の友人が「俺もそろそろクルマの運転やめようかな」と言うのだ。ちょうどその頃、福島・磐越道で起きた高校生が犠牲となったマイクロバス事故が話題になっていた。高校が悪い、いやバス会社が悪い。一番の原因は? その68歳の運転手は......。「2カ月で4、5回も事故を起こした」「代車で事故を起こし全損」「事故3日前に免許〝返納〟する!と言っていた」とか......。どうやらこの運転手は「事故を起こしたこと」を忘れたのか? テレビの情報番組は「高齢者の運転は危ない!」と言わんばかりだ。
友人もそんな番組を見たんだろう。「やめるのはいいけど......。俺が住んでいる町はタクシーが少ないし、一人暮らしだろ。代わりに運転する人もいない......」
悩んでいるらしい。
高齢者だけが、事故を起こすわけではない。ある調査では、免許所有者10万人当たりの事故件数は16~19歳が992・2件、20~24歳が542・2件。確かに、85歳以上は464・1件といくぶん高いけれど......。僕は友人に言った。
「認知症じゃないんだろう。毎日ハンドルを握れ! これからは90歳、100歳になっても運転する時代になるんだから」と励ました。
あの吉村先生は「政治学と同じように、運転も毎日続ければ事故なんて起きない!」と言っていたのを思い出したからだ。
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◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある