牧太郎の青い空白い雲/1026
つい最近だが......「人間、ひょっとすると死なないのでは」と思うようになった。この春、「AI」と出合ったからだ。
「AI」(人工知能)のことは(多分、読者のほうが詳しいと思うけど)......膨大なデータからルールを自ら〝機械学習〟して予測・分析・自動化する。例えば「薬をなくしたんだけど、こんな症状だったら何を飲んだらいいの?」と「AI」 に尋ねると瞬時に答えてくれる。学校のこと、職場のこと、医療機関のこと......ありとあらゆる分野で「的確な回答」を用意している。
文章や画像を生成する「生成AI」が急速に普及して......このコラムだってAIのチカラで書くことが可能だ。
AIは「超万能の神様」。コレを使えば、誰もが「健康」になり、長生きするかもしれない。ひょっとすると、死なないかも?
2年前から「AI」を使っている〝元大学教授〟の知人は「お前には悪いけど、最近は新聞や雑誌を読まなくなった。新聞記者なんてなくなるよ」と言う。
確かに「AI」が世界を変えている。「フィジカルAI」とかいう、ロボットや自動車に搭載されたモノは「現実世界」で自律的に状況を認識・判断し行動する。チャットGPTなどの「画面上のAI」とは違って、製造・物流・医療などの現場で、物理的な仕事をこなす「動く脳」。人手不足解消や業務効率化の切り札になろうとしている。
彼が言うように新聞記者という職業もなくなるかもしれない。
「それより、大学のほうはどうなんだ?」と切り返すと......。「深刻だよ。AI時代の到来で大学は次々に潰れるかも」と話すのだ。少子化による18歳の人口減少と進学者数の頭打ち。「2025年3月期『私立大学経営法人』動向調査」では、全国の私立大学を経営する545法人のうち52・6%の287法人が赤字だったらしい。
「そこへ持ってきてAI時代だろう。出来のいいヤツほど、大学に行かなくてもよい」と彼は言う。確かにAIで知識の習得はできる。学生にリポート作成を義務付けても、AIで作る。従来の座学中心の大学教育は意味がなくなるわけだ。
まあ当方、大学時代、あまり勉強をした記憶はない。大学の役割は友達を増やす場所!と思っていた。その意味では、大学は「人間性を磨く場」にシフトしたらいいけど......。「大卒の肩書」を得るためだけに進学するのなら、そのコストは高すぎる......。
「大学は不滅です」という言葉を思い出した。教育産業「大学通信」の創始者・田所篤志さんと何度か一緒に飯を食ったが、「大学不滅論」を聞かされた。田所さんは、当時の慶應義塾塾長・高村象平先生、早稲田大学総長・大濱信泉(のぶもと)先生と親しく、「人間の運命はどの大学に入るか、ですよ」と笑っていたが......。「大学の運命」はAIとどう付き合うか? 時代は変わる。
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◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある