サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2025年11月 2日号
「独りぼっち高齢者」が約900万世帯...「超老老党」を作りたい!
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牧太郎の青い空白い雲/1003 

 週刊誌の「ウリ筋」はだいぶ変わってきたらしい。

 例えば、(読者が多い)『週刊文春』。自民党総裁選に絡んで「小泉進次郎陣営がニコニコ動画を使って〝ステマ指示〟」とスッパ抜く。いっとき話題になって、永田町では「このスクープで小泉ファンが減り、高市早苗さんが勝った」と言われたけれど......。

 その翌週の「『ラブホ密会』だけじゃない! 前橋市長・小川晶に『複数の男性との関係』を直撃する」もけっこう面白かった。

 スクープ満載だから文春は売れる!と思っていたのだが......。雑誌業界の裏に詳しい知人は「文春だってスクープでは売れないんだ。昨今の週刊誌は〝老老もの〟を出さないと売れない」。

「〝老老もの〟って?」と聞くと、「文春を例に取れば......『老人ホーム 失敗しない選び方 特養、グループホーム、サ高住...』『腰痛〝7つのNG習慣〟うつぶせ寝はダメ!リスク大の行動は...90歳まで健康長寿』というものさ」。

 そう言えば、同じ時期の『週刊現代』は「あなたの街の最高の病院とクリニック『胃・大腸・肛門科編』」という見出しで大特集を出している。

「夫婦とも7080歳になれば、関心事は健康。名医に診てもらいたい。できれば、それなりに立派な施設に入りたい。週刊誌の読者はそんなことしか考えない〝老老世代〟なんだ」

 確かに、高齢化が進んでいる。団塊の世代が75歳前後となった今年、日本の全人口の約18%が75歳以上。2040年には全人口の約35%、つまり「3人に1人」が65歳以上。右を向いても、左を見ても老老老老だらけ......。

 だから......「施設」に入りたくても、満員で入れない。

「まだ、週刊誌を読んでいる人は良いほうだ。在宅の老老介護組にはそんな暇はない」

 老老介護は、介護をする側とされる側、双方の年齢が65歳以上。75歳を超える高齢者同士の介護を「超老老介護」と言うらしい。

 肉体的・精神的負担が多すぎて、介護に疲れ果て、91歳の夫を86歳の妻が殺害した事件があった。

「この事件、週刊誌は扱わなかった。あまりに生々しくて......。年寄りの読者は読みたくないんだ」

 正直に言えば、1010日、81歳の誕生日を迎えた当方、「独りぼっちの高齢者」になるのが怖い。

 今年7月発表の厚生労働省の国民生活基礎調査によると「65歳以上の高齢者の単独世帯」は約903万世帯。彼らはやがて孤独死する?

 自民党総裁選でも、与野党の話し合いでも「老老地獄」対策は議論にもならない。

 少子化対策も必要だが「超老老党」を作りたい! そんな気分だ。

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 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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