サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2025年9月14日号
〝街道一の任侠・山口組〟は誰が7代目親分になっても小さくなる?
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牧太郎の青い空白い雲/999 

 昭和の昔、〝街道一の親分〟は山口組3代目・田岡一雄さんだった。

 なにしろ、組員30人弱の神戸の小さな組を「構成員1万人の組織」にした。

 その影響力は任侠界だけではない。「60年安保」で世間が混乱していた頃、右翼の大物・児玉誉士夫さんが「共産主義勢力に対抗するため、ヤクザを反共勢力として組織する」と言い、山口組3代目の「数の力」を期待したが、田岡さんはこれに反対。児玉構想は頓挫。歴史が変わった。

 当時、警視庁捜査4課を担当していたので〝田岡流〟を取材したかったのだが......何度、申し込んでも「取材はお断り」。田岡さんが亡くなった(1981723日)直後、倅(せがれ)の田岡満さんにお会いすることができた。

 「オヤジは戒名の永照院仁徳一道義範大居士の通り、仁義一筋。それ以外は何もしません。ヤクザの世界は実子を跡目にしないものだ!と言って、私は小さい頃から、ヤクザと無縁でした」

 でも、3代目の「お仕事」は結構、ご存じで、「山口組は東京には進出しない!という約束ですが、田岡さんの葬儀には、東京の大企業のトップがいらっしゃっていましたが?」と質問すると「気が付きましたか。実は、オヤジは隠れて東京・渋谷の地上げをしていたんですよ。〝山口組と言わない山口組〟が全国にいるんですよ」と笑っていた。

 3代目の子分は日本各地にいた。

 山口組は4代目、5代目、6代目......と続き、勢力を激増。いっとき「構成員9万人」を超えている!と言われた頃もある。昭和、平成、令和を通じ、山口組は「街道一」である。

 その6代目山口組の若頭(No.2)の高山清司さんが(事実上)引退した。「間違いなく7代目になる!」という噂(うわさ)だったが、弟分の竹内照明さんを若頭に推した。多分、竹内さんが7代目親分になるんだろう。

 で、改めて山口組の近況を調べて驚いた。構成員が3500人に激減しているのだ。

 7月終わり、この欄で「清水次郎長に知らせたい〝ヤクザは住民税非課税世帯〟という現実」で、ヤクザは貧乏人!と書いたが「街道一の山口組」だけは裕福!と思っていた。

 警察の取り締まりが厳しいこともあるが、美味(おい)しい資金源がなくなっている。

 山口組も貧乏。知り合いの刑事さんが「これからの捜査対象は山口組ではなく、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)なんだろう」と話す。SNSを通じて募集した闇バイトを使って凶悪犯罪を起こすグループが、いまや令和版組織暴力なのだ。

 田岡3代目が亡くなって45年弱。天下の山口組、誰が7代目親分になっても、「下り坂」か?

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 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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