サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2025年3月 9日号
「政治家犯罪」を放置する検察ではキャベツ泥棒でも不起訴?
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牧太郎の青い空白い雲/976 

 キャベツ(英語名Cabbage、頭上の野菜の意)は世界最古の野菜である。

 キャベツの栽培を始めたのは、古代からイベリア半島に住んでいた人々。紀元前6世紀ごろ、黒海沿岸部から馬と戦車を持ってヨーロッパに渡来したケルト人がこれを学び、栽培技術を広めたという。

 古代ローマでは「ケルト」は、〝未知の人〟という意味。ヨーロッパ人にとってキャベツは「未知の食べ物」だった。

 キャベツは「薬草」でもあった。古代ギリシャや古代ローマでは胃腸の調子を整える健康食として重宝された。15世紀末、コロンブスが新大陸を発見して以来、キャベツは世界中、誰でも食べる野菜になった。何しろ、安い。19世紀には貧しい労働者階級の食卓ではジャガイモとキャベツが必ず並んでいたそうだ。日本には江戸時代前期にオランダ人によってキャベツが長崎に伝来したらしいが、明治時代になると殖産興業の一環として「値段が安いキャベツ」の栽培が奨励された。

 ところが、である。昨年秋「異変」が起こった。キャベツは「贅沢(ぜいたく)品」になってしまったのだ。

 夏の高温に加え、秋口の急激な気温低下で雨も少なく、十分な大きさに育たないものが多かった。その結果、キャベツは例年より2倍以上の高値。一時期、11000円にまで値上がりした。

 貧乏人はキャベツが食べられない?

 昨年12月に茨城県内の畑で、合わせて2000個以上のキャベツの盗難事件が発生。各地で「野菜泥棒」が立て続けに起こった。

 早朝か深夜に5人ぐらいのグループで畑にトラックを横付けして、包丁で切る奴(やつ)、それをトラックに投げ入れる奴、車内で待つ奴と分担。何やら「闇バイト強盗」みたいな組織的犯罪である。そうしたなか、茨城県下妻市の畑から八つのキャベツを盗んだ中国籍の2人組を地元の農家が捕まえ、警察に突き出した。

 2人は窃盗の現行犯として逮捕されたが......。「下見の最中」だったのだろう。地元民は「余罪」を追及してほしい!と思ったが、2人は124日、なぜか不起訴処分となってしまった。

「現行犯」なのに? キャベツ農家たちの「怒り」が収まらない。農家のなかには「あの事件が不起訴だったから、キャベツ泥棒を起訴できないんだろう」と笑っている人も?

「あの事件」とは......。自民党安倍派が3年分・4億円余の裏金を記載しなかったパーティー券裏金事件のことである。どう見ても「組織的脱税」と見えるが、多くの政治家センセイたちは不起訴。

 キャベツ泥棒は「検察の不平等」をあげつらい、無罪を勝ち得たのか(笑)。ともかく、野菜泥棒の〝天下〟が続く。

 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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