サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年10月 6日号
「人を見る目」がない日本人がヘンな知事や変な首相を選ぶ?
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牧太郎の青い空白い雲/960 

 例の兵庫県知事の齋藤元彦さんは気の毒である。

 たしかに、度が過ぎたパワハラの数々。刑事事件になってもおかしくない「所業」もあるから、批判されても当然だけど......。それにしても、県議会86人の議員全員が辞職を求める。まるで「殺人事件」の犯人のような扱いだ。ちょっと前までトップに君臨していたのに......。誰一人として「味方」がいない。気の毒である。「パワハラ野郎」はどこにでもいる。当方が勤めていた新聞社にも機嫌が悪いと、「瞬間湯沸かし器」のように叱りつける上司が何人もいた。「バカ殿様」は齋藤さんだけではない。

 小学校時代から成績優秀、イケメンでスポーツ万能。そんな彼がどうして「バカ殿様」になったのか? 多分、心の中に「妙チキリンな嫉妬心」が隠れているのだろう。

「僕は血のにじむような努力を重ね知事になった。それなのに、何も努力しないで、ラクラクとバラ色の人生を送っている奴(やつ)がいる。これは許されることか?」と思い込む。要するに「努力なき成功」に嫉妬してしまう。だから、パワハラに走ってしまう。似たような被害を受けたことがある。たまに(努力しないで?)特ダネ記事をスクープしたら、妙チキリンな先輩から何かにつけて虐(いじ)められた。

 齋藤さんから「努力しないで成功した」と誤解された?県職員はもっともっと気の毒である。パワハラの被害者になっただけでなく、「知事を辞めさせろ!」という抗議の電話が鳴りやまない。通常業務ができず、みんな神経衰弱?である。

「県民が一番気の毒だ!」という向きもある。でも、県民にも「責任」があるような気もする。もし、選挙民に「人を見る目」があったら、変な人物を選ばなかったはずだ。

 人間、上手に生き延びるためには「人を見る目」が一番大事だ。

 仏教では「人を見る目(真理を見る目)には五つの眼(め)がある!」と教えている。まずは「肉眼(にくげん)」。人間の肉体が持っている眼のこと。誰でも持っている。「天眼」。欲望を捨てた天人が持っている眼。過去・現在・未来、東西南北すべてを見通すことができる「慧眼(えげん)」は、真理を見抜く智慧を兼ね備えた眼。これも「修行」で手に入れることができる。そして「法眼」。菩薩が持っている眼で、すべての生き物を救うための目。最後は「仏眼」。仏陀が持っている眼。つまり肉眼、天眼、慧眼、法眼のすべてを持っている。

 我々は、この「五つの眼」のチカラを借りて、生きているのだが、「人を見る目」はなかなか身につかない。だから騙(だま)される。

 自民党総裁選でも「人を見る目」が試される。

 くれぐれも、彼らが時折見せる 〝作り笑い〟 だけには騙されないようにお願いしたい(笑)。

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