牧太郎の青い空白い雲/955
猛暑の病院通い。汗びっしょりでリハビリを終えたら、作業療法士の若者から「ご苦労さまでした。熱中症はもちろんですが、コロナ感染症が流行(はや)っています。気をつけてください」と言われた。彼の勤務する都内の病院でも、コロナ患者用に準備してあった部屋は満床。高熱が続き肺炎と診断されてもなかなか入院できないそうだ。
新型コロナは第11波に突入か?
「5類になったんだから、〝ただの風邪〟みたいなもの」とタカを括(くく)っていると、彼は「コロナに感染すると、めちゃくちゃお金がかかる」「受診・検査に5000円。抗ウイルス薬に3万円ぐらいかかりますよ」と言う。
本当かよ?
帰宅して調べてみると、新型コロナ感染者の治療薬のゾコーバ(5日分の薬が処方された「3割負担」の場合)は、おおよその価格は5万2000円だから自己負担費は1万5600円。ラゲブリオは薬価が9万4000円だから2万8200円。パキロビッドの場合は9万9000円だから2万9700円かかる計算となる。3万円に近い。ベラボーな価格だ!
入院したらもっとかかる。3月までは「高額療養費制度」が適用されていたが、4月以降は「補助」がなくなり、コロナ感染で7日間入院した場合、治療薬の費用を除いて3万9800円から5万7600円ぐらい請求されるようだ(もちろん食事代は別)。
場合によっては「カネがないから治療拒否」ということになる。感染したら「死ぬしかない」と覚悟する患者も出るのではないか。
薬の値段が高すぎるような気がしてならない。
薬価は、製造原価(原料費、労務費、製造経費)、研究開発費、販売費などに「製薬企業の営業利益」を乗せて算定されるが、もしかして「製薬会社」が儲(もう)けすぎ? と疑いたくなる。
というのも、製薬会社のトップの役員報酬がベラボーに高いのだ。
たとえば、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)の役員報酬の総額は20億8200万円(2024年3月期)と報じられている。
どう見ても「稼ぎすぎ」だ。
他の製薬会社でも「役員報酬1億円以上の経営者」がけっこういると聞く。命を守る仕事だから、それ相応の「報酬」があって当然だが......。「年収1億円が普通!」というのは、ビンボー人の当方から見れば異常な稼ぎである。
なぜ、世間で「儲けすぎ」が批判されないのか不思議である。大手メディアは製薬会社の広告料をもらっているから? 製薬会社の中には「政治献金」もしているから、政治家は「儲けすぎ」を問題にしないのか?
新型コロナも怖いけど......。「高額すぎる治療薬」の〝慢性疾病〟も深刻だ(笑)。
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◇まき・たろう
1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある