サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年8月11日号
〝19歳喫煙〟で五輪出場できないなら〝脱税議員〟は立候補禁止だ!
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牧太郎の青い空白い雲/954 

 カネは魔物である。上手に使えば〝成功〟するが、下手くそに使えば〝大失敗〟する。

「政治は数。数は力、力はカネだ!」と豪語した角さん(田中角栄元首相)は、確かに「カネの使い方」は天才だった。相手に「カネを受け取るしかない状況」を作るのだ。

 たとえば「香典」である。

 その昔、自民党と敵対する野党・社会党に大出俊さんという名物議員がいた。何度か、取材させてもらったが、角さんが郵政大臣だった頃、労組「全逓」の幹部。議員になると自民党の政策を猛烈に批判。彼の爆弾質問で審議がいつも空転する。

 その大出さんの親族が亡くなった!と聞くと、角さんは子分の代議士に50万円入った香典袋を渡し「これを届けてくれ」と頼んだ。当時、この種の「祝儀・不祝儀」はせいぜい10万円。破格の金額だ。

 しかも、角さんはちょっと時間を作って「君は行かんでよろしい。ワシが直接行く」。角さんは冠婚葬祭を大事にした。葬儀は「二度目がないから」と言って必ず香典を用意した。大出さんも「コレには困ったよ」と笑っていた。

 最近、香典で失敗したのが、自民党を離党した堀井学衆院議員。選挙区内の人に秘書や家族を通じて香典を渡して、東京地検特捜部から公職選挙法違反の疑いで強制捜査を受けた。堀井さんの地元・北海道では、自分の名前と住所、金額を記入してある香典を渡し、受付の人がその場で中身を確認。香典の領収書を手渡す風習?「香典代として」のただし書きがある領収書が数多く押収されたらしい。

 しかしこの犯罪、それほど悪質だろうか? 多かれ少なかれ「香典」を利用する議員はいる(堀井さんのことを「極めて遺憾だ」とコメントした自民党の茂木敏充幹事長だって、経済再生相だった2017年、地元の栃木5区の複数の有権者に「香典」を渡した!と週刊誌が報じたこともある)。

 はっきり言って、政治家の摘発に「不公平」を感じてならない。

 たとえば、昨年11月からの政治資金パーティー事件。キックバックした裏金を「脱税」した議員の多くが不起訴になった。たとえば、安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用を補填した事件。20年に公設第1秘書が略式起訴されたが、安倍さんは不起訴だった。ウン万円の香典を配った小物は捕まるけど「何千万の大泥棒」は無罪放免?

 可笑(おか)しいじゃないか!

 NHK杯3連覇の19歳の体操女王・宮田笙子さんが「喫煙」でパリ五輪を辞退させられた。腹が立った。投票権も持つ19歳がたばこを吸っただけで......。「以後気をつけなさい!」と指導すべき話じゃないか!

 宮田さんが五輪出場を辞退するなら、「裏金の政治家」の面々は即刻、議員辞職! 永遠に立候補禁止! それが「平等」というものだ。

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 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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