サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年3月31日号
任侠DVD「日本統一」に女性ファンが共感する理由とは?
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牧太郎の青い空白い雲/939 

 恥ずかしながら、任侠DVD「日本統一」に夢中だ。横浜出身の氷室蓮司(本宮泰風)と田村悠人(山口祥行)の二人は、地元のヤクザを解散に追い込み、シノギを奪おうとする「最強最悪の不良」。やがて、日本最大の任侠団体である神戸「侠和会」の盃(さかずき)を受け、〝日本から抗争をなくす〟という大義の下、日本極道界統一を目指す!というサクセスストーリー。

 何となく、実在する最大規模の暴力団「山口組」をイメージしてしまう。事実、「六代目山口組」の知恵袋、若頭の高山清司さん(三代目弘道会総裁)もファンらしい。一部には「高山さんがモデル」との向きもいるそうだ。

 昭和40年代、鶴田浩二や高倉健の「弱きを助け、強きを挫(くじ)く」任侠ものが大ヒットした。ただ、昭和のヤクザ映画と「日本統一」は何から何まで違う。テンポが違う。高倉健演じる「昔のヤクザ」は我慢に我慢を続け、最後の最後、悪人を日本刀で殺害する。「日本統一」はまったく異なる。主人公の氷室蓮司と田村悠人は「組織拡大のため」なら、なんでもござれ! すぐ相手をピストルで射殺する。

 このシリーズ、約11年前にスタート。熱烈ファンに支えられ、現在60回。なぜか女性ファンも多く、タオル、エコバッグ、Tシャツなど「日本統一グッズ」が飛ぶように売れている。知り合いの女性に、ファンになった理由を聞いてみると「本宮泰風と山口祥行がカッコいい。怖いもの知らずがいいのよ」。

 よく分からないが、この種の〝ヤクザ好きの女性〟は週刊誌の暴力団情報もよく読むらしい。最近、彼女らが話題にしているのが、2月に逮捕された「絆會(きずなかい)(旧・任俠団体山口組)の金澤成樹(本名・金成行)若頭」のこと。金澤容疑者は織田絆誠(よしのり)会長に30年以上も仕えた「絆會」のナンバー2。2020年9月、長野県宮田村で六代目山口組系組織へ勝手に移籍した「元部下」を銃撃、逃亡を続けていた。

「裏切り」を許さない!という掟(おきて)。でも「元部下」。金澤容疑者は〝武士の情け〟で命だけはとらなかったらしい。それが「ヤクザ好き」の支持を集めているのだ。22年1月に水戸市の組事務所で六代目山口組系幹部が射殺された事件、23年4月に神戸市のラーメン店主で六代目山口組系組長の射殺事件。捜査当局は、その2件の殺人事件も「金澤容疑者の仕業」と見ているらしい。

 まるで「日本統一」のヒットマンを地で行った感じだ。別のヤクザ好きの女性は「今のご時世、政治家のほうがヤクザより悪いわ。裏金で銀座高級クラブに通い詰めたり、愛人を囲ったり、研修は名ばかりで裸ダンサーを呼んで大騒ぎ。腐れ切った奴(やつ)ばかり。みんな、有権者を裏切っている。その点、ヤクザは裏切らないわよ」と話す。

 何となく、ヒットの理由が分かるような気がするじゃないか(笑)。

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