サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年3月24日号
裏金騒動で得をするのは"減税は悪!"と唱える「ザイム真理教」
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牧太郎の青い空白い雲/938 

「市民は増税、自民は脱税」という流行言葉まで登場して、世の中、「政治家は(特に自民党)は悪!」という雰囲気。確かに、政治家は信じられない。

「パー券裏金」騒動で、安倍派は壊滅状態で、自民党は取りあえず「派閥解散」で世間の批判をかわす魂胆だ。そんな中で「麻生派」だけは解散しない。なぜ元気か? それは麻生太郎副総裁が「ザイム真理教」の熱心な信者だからだ。

「ザイム真理教」という言葉をご存じか? 経済アナリストの森永卓郎さんの『ザイム真理教』が昨年秋、突如ヒット。社員1人の小さな出版社「三五館シンシャ」が発行した。「ザイム真理教」とは財務省のこと。「税金を払いましょう」とお題目を唱えるこの宗教は、カルト教団化して「財政均衡主義」という教義にメディアや政治家が次々に洗脳されている。

 森永さんは反ザイム真理教。「この教義を守る限り、日本経済は転落を続け、生活は貧困化する!」と、増税は悪!減税は善!と主張する森永さん。財務省にとっては「都合の悪い本」である。

 ところが同じ頃、パー券裏金騒動が起こった。税務署は政治家の脱税を許すのか、という批判を浴びたがその半面、財務省は内心「政治家のチカラがなくなった」と喜んでいるのではないのか?

 派閥が次々に解散して財務省に圧力をかける集団がいなくなれば、永田町は「ザイム真理教」の天下になるからだ。実は自民党の派閥の中で、麻生派はこの宗教の熱心な信者だ。派閥のトップ、麻生さんは長い間財務相を務め、辞めてからも子分の鈴木俊一さんを後任に据えた。「減税は悪!」という教えに洗脳された鈴木さんは、岸田首相が「税収増分を国民に還元する」と訴えると、「過去の税収増分は政策経費などで使用済み。減税なんてできない」と言い出す始末だ(昨年11月)。

 麻生さんは「大宏池会構想」の持ち主。「宏池会」は1957年6月「池田勇人(元首相)後援会」として誕生したが、集まったのは前尾繁三郎元衆院議長、大平正芳元首相、宮沢喜一元首相......と旧大蔵省(現・財務省)出身者ばかり。要するに「ザイム真理教」の聖地みたいな政治集団なのだ。ところが、「宏池会」は何度か分裂してチカラを失った。実は麻生さん、これを結集し「大宏池会」を作ろうとしている。森永さん的に分析すると「ザイム真理教自民党支部の拡大」のようなものだ。裏金騒動で「積極財政派」の多い安倍派、二階派が壊滅? 茂木派も、小渕優子さんらが離脱した(小渕さんらは「財政健全化推進本部」の主要メンバー。つまり、財務省寄り)。

 要するに、裏金騒動で「財政再建派」(ザイム真理教)が元気になった!というワケ。今、裏金騒動と財務省の微妙な関係が囁(ささや)かれている。

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