サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年3月10日号
森喜朗さんが倫理審査会に出席したら、是非とも聞きたい「腹の中」
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牧太郎の青い空白い雲/936

 首相経験者がプロレスに参戦!なんてことが起こりそうになった。

 2006年の夏、全日本プロレス・両国国技館大会。この日、首相経験者の森喜朗さんは、馳浩さん(現在の石川県知事)の引退試合を観戦したのだが、リンク上でプロレス集団「VOODOO-MURDERS」(ブードゥーマーダーズ)の一人が「おい、そこの森! お腹(なか)の中、何か詰まってるねぇ、お金か? このかす野郎!」と罵声を浴びせた。

 森政権の治世を一介のプロレスラーが猛烈に批判する......。場外乱闘に乗じ罵声が続く。森さんも真っ赤になってパイプ椅子を持って身構える。観客から「森コール」が起こったが、SPが必死で森さんを抑え「史上初の首相経験者プロレス参戦」は実現しなかった。小・中学校時代の森さんは「いじめの常連」と自ら話している。森さん、政治家にならなかったら、格闘技の道に行ったかもしれない(笑)。

 気になったのは、プロレスとはいえスポーツの関係者が首相経験者に向かって「お前は腹黒い」と言ったことだ。「お遊び」としても、何か「特別の情報」があるはずだ。気になった。

 森さんに関しては「お金絡みの話」がないわけではない。

 無所属で当選した時、当時の田中角栄・自民党幹事長から党本部に呼ばれカネを渡されると、これに反発。「追加公認の公認料だから」と言われ、渋々受け取った。その帰り、森さんは親分の福田赳夫(たけお)邸に寄って「資金援助」を期待したが、相手にされず空振り。それでも、角福戦争で「福田派」の応援に加わった。たしか、「総裁選に勝つにはカネをバラ撒(ま)けばいい」と言い出し、親分の福田さんに叱責されたのも森さん? 「カネと政治」に関しては「何から何までご存じ」なのかもしれない。

 最近、『週刊文春』(2月15日号)で森さん絡みの「ワイロの現場」を知った。東京五輪をめぐる受託収賄事件で逮捕された大会組織委員会の元理事、高橋治之(はるゆき)さんのインタビュー記事だ。見出しは【安倍晋三に裏切られ、森喜朗に嵌(はめ)められて...五輪の闇 初告白】。

〈安倍さんは「迷惑はかけない。 絶対に保証する」と約束した。なのに......〉〈実は業者から「森さんに、いくら渡せばよいか」と聞かれ、僕は「オプジーボは一回300万円」と話しました......〉

 森さんはがん患者。で、300万円を見舞いにしたら!とアドバイスしたという(当時、「オプジーボ」を肺がん患者に使う場合、体重1㌔につき3㍉㌘を2週間間隔で投与。日本人の成人男性の平均体重は約66㌔。これを当てはめると薬価は月に約300万円。1年で約3800万円かかるといわれた)。

「見舞い」という名前のワイロ。森さんは果たして「腹の中」にしまったのか? あのプロレスラーではないが、森さんの「お腹の中」が知りたい(笑)。

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