サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年1月28日号
岸田流の「親の七光り」制度を止めないと、地震大国・日本は?
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牧太郎の青い空白い雲/931 

 2023年、アメリカで「ネポベイビー」という言葉が流行した。

「ネポティズム・ベイビー」の略だそうだが......。「ネポティズム(Nepotism)」とは縁故主義のこと。家族や親戚といった血縁者や同じ地域の出身者、昔からの知人などを〝えこひいき〟する考えである。

 この言葉、その昔ローマ教皇が愛人に産ませた子どもを「甥(おい)」(Nephew/ネフュー)と偽って「特権」を与えたことに由来する。インチキ臭い「語源」だが、要するに、日本でいう「親の七光り」だろう。

 確かに、ハリウッドのショービジネスでは「親の七光り」で成功した〝2世セレブ〟(ネポベイビー)がわんさと存在する。約1年前(22年12月)、米有力誌『New York Magazine』が「ハリウッドのネポベイビー・ブームを過剰分析」という特集を掲載した。

 2世・3世だけが成功していいのか?「親の七光り」現象は、すべてのものは平等で、差別を認めない「民主主義の国」でも、深刻な社会現象になっている。

 日本はどうだろう?

 どこを見ても「親の七光り」ばかりではないか? 例えば、世襲議員は国会議員全体の約3分の1。オーストラリア、韓国、イギリス、アメリカなどの民主主義国家では世襲比率は5~8%なのに、日本は異常な数である。特別の支援組織を持たなければ、2世・3世の世襲組しか当選できない状況だ。

 歴代の首相を見てみても橋本龍太郎以降、菅直人、野田佳彦、菅義偉以外は皆、世襲議員。直近でも元首相の麻生太郎、安倍晋三も岸田文雄首相も「ネポベイビー」だ。その結果、政治家としての資質に欠けた人物が議員になり、大臣になり、天下を取る。

 元日の能登半島地震。岸田内閣の対応を見ていると、つい「おぼっちゃまを総理大臣にしたが、大失敗だった」と思ってしまった。

 すべてが後手後手。10日以上、瓦礫(がれき)の下に放置された人々。断水で「水がないので、雪を食べてしのいでいる」と聞き......。泣けてしまった。

 だというのに、当の岸田さんはBSフジの番組(1月4日夜)に出演して、総裁選への「思い」を(ふんぞり返りながら?)ベラベラと喋(しゃべ)る。

 酷寒の中、孤立集落が放置されたままだというのに......。被災地で、この番組を見た人々はただ「絶望」を噛み締めたのではあるまいか?

「親の七光り」組を指導者にしてはいけない!いまだに、江戸時代のように、我々は「殿様」「庄屋様」「地主様」「〇〇家様」といった「権威」に盲目的に従っているのではないのか。

 今年こそ「親の七光り」から脱却できないとすれば、日本はもう駄目だ!

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 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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