サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年1月14日号
今年こそ若者たちは「格差」に怒り「正義の龍王」になれ!
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牧太郎の青い空白い雲/930

 新年、おめでとう。

 自民党安倍派のパー券裏金騒動とともに、慌ただしく年を越えた。

 調べてみればみるほど、腹立たしい話だ。(零細企業のオヤジでもある)当方、昨年も税金を払うのに四苦八苦。だというのに、議員センセイは「パーティー券代金」という賄賂同然のカネを貰(もら)い、脱税のやりたい放題。

 安倍派「5人衆」の一人は、特捜部の水面下での捜査が始まって以降も、国会議事堂にほど近い、ホテルの会議室での「茶話会」という名のパー券を大々的に発売。意外にも、当日の参加者10人前後。事実上、「架空パーティー」でカネを集めていた。

 まるで詐欺師のやり口。恥ずかしい限りだ。

 でも、年末に会った若者(雑誌編集者)は「でも、騒ぎが終われば、また自民党なんでしょう」とイヤに冷静なのだ。

 今回の騒動、もし他の国なら大規模なデモが起こったり、間違いなく「政権」がひっくり返るはずなのに......。若者は自民党政権をそのままでよい!と思っているのか? はなはだ疑問だ。

 はっきり言って、若者は「弱者」である。低所得者、要するに貧乏人である。かつて、ほとんどの日本人が「自分は中流」と思った時代はとうの昔。自民党政権、特に安倍晋三内閣が「富裕層」に味方する政策を続け、金持ちと貧乏人の二極化は深刻だ。

 経済格差だけではない。〝上流・下流〟という言葉が、ごく普通に使われる世の中。満足な医療を受けられない、まともな教育が受けられない「人」がたくさんいる。

 その「不平等」を放置してよいのか? なぜ、若者たちは立ち上がらないのか?

 いつも、疑問だった。

 実は年末、ある雑誌を読んでびっくりした。吉川徹・大阪大大学院教授が「若者は格差を自覚していない」と分析しているのだ。 若者は「格差」を知らない! まさか? 吉川さんは「自分たちが下なのかどうかも分からないまま、政府や社会的に成功した高所得者層についていけばいい、という空気が醸成されている」などと話す。

 もし、吉川さんの分析が正しいとすれば、我々は若者たちに「格差」を教えなくてはならない。そのためには丁寧に丁寧に、「格差の現状」を知らせる「革命家」が必要だ。

 今年は「辰(龍)」の年。中国では「龍」は神獣・霊獣。『史記』での「劉邦出生伝説」など、中国では「龍」は革命家のシンボル。水中か地中に棲(す)む「龍」は、その啼(な)き声で、雷雲や嵐を呼び起こす。

 今の日本では、丁寧な言葉で、人々を納得させる「大谷翔平」のような「革命家」が必要なのだ。

 さて皆さん、新年の集まりでは「格差という犯罪」を互いに話し合いませんか?

 まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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