サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年11月26日号
流行語大賞「増税メガネ」がダメなら「地球沸騰化」を選ぼうよ!
loading...

牧太郎の青い空白い雲/925 

「新語・流行語大賞」の季節がやって来た。今年は大谷翔平の「憧れるのをやめましょう」、阪神タイガースの「アレ(A.R.E)」、将棋の「藤井八冠」や「闇バイト」......など30の大賞候補がノミネートされたが、なぜか〝本命〟の一つ「増税メガネ」が選ばれなかった。

 1984年に始まった新語・流行語大賞。1年の間に発生したさまざまな「ことば」の中で、軽妙に世相を衝(つ)いた「表現」を選ぶ。自由国民社と大賞事務局が11月にノミネートを選出、選考委員会がトップテンと年間大賞語を選ぶ。

 今年もさまざまな「騒ぎ」が起こったが、一番最悪の事件は「物価高(円安)」だろう。無策の経済政策で、国民は泣く。「増税メガネ」という言葉は「迷走する岸田内閣に、国民が振り回されている世相」を見事に反映している。失礼だが、高額なメガネを掛ける以外に、なんら「個性」を感じさせない「総理大臣の存在」は日本国の不幸を象徴してはいないか?

 その大賞に最も相応(ふさわ)しい!と思っていた作品が、なぜかノミネートの段階で〝落選〟してしまった。

 同じ政治家批判の「エッフェル姉さん」は入ってるのに......。岸田さんに「忖度(そんたく)」したのか(笑)。

 しかし、である。新語・流行語大賞はこれまで的確に「歴史」を書き残した。「あの渾名(あだな)は品が悪い」という理由で、結果的に「権力」に負け「歴史」に残すことができなかったのなら、残念無念である。選考委員の方には、せめて残りの30の中から「歴史に残る名文句」を選んでほしい。

 僕だったら「地球沸騰化」だ。

 この夏、ベラボーに暑かった。熱中症で救急搬送された人が昨年の同時期と比べて2・3倍。秋になっても「暑さ」は変わらない。

 子どもの頃、11月の「お酉(とり)様」に行く時、みんなコートを着ていたのに今年は「半袖」である。「異常な暑さ」は全世界、変わらない。今年7月は北米、アジア、欧州の広範囲で熱波が発生。カナダやギリシャで発生した山火事の被害が拡大。砂漠のリビアでは大洪水。国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来」と話す。

 沸騰とは? 液体が表面だけでなく内部からも激しく気化して気体(蒸気)となる現象である。「地球沸騰化」が進めば、2100年ごろまでに地球の温度は、1・1~6・4度上昇。海の氷は溶け、海面が18~59㌢も上昇する。南太平洋に浮かぶ人口1万人のツバルという国は無くなってしまう。

 何もかも焼け尽くす炎熱地獄、終わりなき洪水......。人類へのさばきのため、聖書が描いた「終末」が今、現実になろうとしている。戦争以上に凄(すさ)まじい「気候災害」をどう防ぐのか?

 世界中が生き延びるためにも「地球沸騰化」を大賞に選んでほしいのだ。

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム