牧太郎の青い空白い雲/923
カネ不足だ!
知り合いの若い医療従事者が「食料品の値段が高くて、何も買えない」と愚痴をこぼす。30歳代で共働き。子どもが二人、幼稚園に通っている。
「恵まれている」ように見えるが、彼の家計はカスカス。カネ不足だ。
「お年寄りは、あんまり食べないからいいですよね」と冗談を言う。馬鹿言うな! 79歳だって「カネ不足」で悩んでるんだ。
ともかく、魚介・肉類などの消費は10カ月連続で減少している。庶民の多くが「カネ不足」で食べられないのだ。
そんな最中(さなか)、「経団連」の十倉雅和会長が「若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには全世代型の社会保障改革しかない。それには消費税などの増税から逃げてはいけない」と言い出した。
消費減税なんて、冗談じゃない!増税が必要だ!と言うのだ。
自民党の一部が「選挙に勝つには、消費減税しかない!」と言い出したのにストップをかけた形。結局、「消費減税を決めると国民が減税になるまで買い控えるから」という〝屁理屈(へりくつ)〟で消費減税はもちろん、「所得減税」まで消えそうだ。これでは「経団連」の言いなりじゃないか。
なぜ、政府自民党は「財界の犬」になってしまったのか?
「カネの支配」である。
住友化学、トヨタ自動車、日立製作所、キヤノン、野村HLD、日産自動車、三菱重工業、大和証券G、東レ、パナソニックHLD......。これは、巨額の政治資金(住友化学とトヨタ自動車の場合5000万円)を自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金した「大企業ベスト10」。三井物産、住友商事、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅の大手商社5社もきっちり2800万円で揃(そろ)っている。2022年11月に総務省が開示したものだ。
この大企業の大口献金で、これまで法人税は段階的に引き下げられている(43・3%→23・2%)。巨額な企業献金が「税制」を支配しているともいえる。
1990年代、政党や政治家が企業・団体献金に依存したままでは金権腐敗政治の根が絶てない!という口実で、政党交付金制度が生まれた。国民1人当たり年間250円の税金を国政選挙での得票率や議席数に応じて、届け出た政党に割り当てる仕組みだ。
当時、多くの政治家は「企業献金は悪。受け取らない」と誓ったが、何のことはない。自民党は「政党交付金」と「巨額な企業献金」の二重取り。
まるで「詐欺」じゃないか。
大企業と政府自民党の「カネの支配」が続けば、庶民の「カネ不足」はまだまだ進む。新聞、テレビにとって大企業は大事なスポンサー。だから「カネの支配」を批判しないが、このままでは「詐欺の片棒」になってしまうぞ!