牧太郎の青い空白い雲/920
10月10日に79歳の誕生日を迎える。あと1年で80歳。嗚呼(ああ)、何もしないで歳をとってしまった。これからどう生きれば良いのだろうか? 正直言って不安である。
「80代の壁をラクに超えられる」といった本を読んでみた。筆者の医師・和田秀樹さんは「食べたいものを食べろ」「血圧・血糖値は下げなくていい」「がんは切らない」「ボケることは怖くない」と丁寧に丁寧に「生き方」を教えてくれる。
「80歳になれば、ほとんどがんになる。だから予防なんかするな!」
なるほど、血圧だって血糖値だって気にすることはないんだ!
思わず膝を叩(たた)いた。
和田先生の言いなりになれば「自由で元気な高齢者」になれる(和田先生は「幸齢者」と名付けている)。
でも、一つだけ「そうだろうか?」と疑問になる事柄がある。
「お金の心配をしなくていい」
先生は「我が国には、高齢者の生活を支えるさまざまな制度があります」。だから経済的な負担を心配する必要はない!と言うのだが......。コレは本当だろうか?
この本を読んだ翌日、日銀は金融政策決定会合を開き、現行の金融緩和策を維持する!と宣言した。金融機関が日銀に預ける資金の一部につく0・1%のマイナス金利を据え置くと言うのだ。
はっきり言って、金利は低すぎる。だから、日銀も金利を上げたいのだが、金利が上がれば変動金利ローンに大打撃、不良債権のヤマ......。何より、長期国債の発行残高の半分以上を保有している日銀にも大きな打撃。金利が上がると国債の価格は下落。当座預金の金利が上昇して利払い額が急増する。
金融緩和を止(や)めたくても止められないのだ。しかし、金利が上がらなければ「円安」はさらに進み、物価高が止まらないだろう。
デフレ脱却が「どうのこうの」と理由をつけているが、日本経済は本当のところ「身動き」ができない状態だ。人間、80歳近くなるとつい「最悪の展開」を予想したくなって「異次元の円安で、円が紙くず同然に?」と呟(つぶや)いてしまった。
だというのに、貧困・日本国の総理大臣は国連総会で「海外のシンクタンクに核軍縮の専門部署を設置するため、30億円を拠出する」と約束した。例の「岸田バラマキ」である。知り合いの官僚は「海外ではカネをばら撒(ま)かないと、誰も日本の言うことを聞いてくれないから」と笑っていたが、今回も国連の会場はガラガラ。岸田演説を聞いた聴衆は10%もいなかった。
物価高、実質賃金の目減り、高止まりするガソリン価格。若い世代が苦しんでいるのに、総理大臣様はいい気なもんだ。
さて、和田先生が約束する「高齢者の支え」になる制度は、今まで通り可能なのか? 「80歳の壁」を前に、誰もが不安になっている。