サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2023年9月10日号
「ターボがん」「処理水放出」...「お上」を信じられない不幸
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牧太郎の青い空白い雲/916

 最近「ターボがん」という言葉を知った。

 医学用語ではない。新型コロナワクチン接種の後遺症で「がんの進行が加速する」という〝症状〟を表す「造語」らしい。コロナワクチンを接種したため、本来なら人体が制御できるがん細胞が急速、かつ攻撃的に広がる―。それを「ターボがん」と呼ぶらしい。

「ターボがん」について、厚生労働省は「科学的根拠や信頼できる情報源に基づいていない不正確なもの。注意が必要」と呼びかけているのだが......。SNSでは「3回目の接種後、がんが発覚。治療のかいもなく、ひと月たたずに父は亡くなってしまいました。ターボがんだったのでしょうか?」といった〝訴え〟が続いている。

 ワクチン後遺症に関しては、初期の急激なアナフィラキシーショックに加え、中長期的な免疫低下などが指摘されているから、一概に「ターボがん」の存在を否定できない。

 で、当分ワクチン接種は止(や)めることにした。これまで、「お上(厚労省)」の言い分を素直に信じてきたが......。コロナ騒動以降「お上の言い分」は眉に唾をつけて聞くようになってしまった。

 狐(きつね)や狸(たぬき)に化かされている!とは思わないが、このところ岸田政権は何かにつけて信じられない。

 東京電力・福島第1原発の処理水を海洋に放出する「案件」も疑問が残る。「安全性の確保、風評被害対策の状況を政府として確認し、判断していきたい」などと岸田さんは「慎重な言い回し」だったが、突然〝エネルギー本〟を買った!と公表。8月11日午後、東京の「丸善丸の内本店」で平田竹男『世界資源エネルギー入門』などを購入したという。お勉強を重ね、その結果、8月24日に処理水の海洋放出を決断!と「演出」したかったのだろう。同20日には現地を視察したが、それでも地元漁民の多くは「お上」を信じようとしない。

 なぜ、岸田政権は「不信」だらけなのか?

 もちろん、物価高もある。ガソリン代に加え、10月には大手電力10社すべてが家庭向け電気料金を値上げする見通しだ。大手都市ガス4社のガス料金も値上げ予定。それなのに岸田さんはただ黙って見ているだけ。国民に「信じてくれ!」と頼んでも、どだい無理だろう。

 それより致命的なのは、例の木原誠二官房副長官の妻の元夫が2006年に不審死した「謎の事件」。『週刊文春』が次々と新事実を暴いても、岸田政権は「新聞、テレビが報道しなければ大丈夫」と思い込んでいる。だが、時代はSNS主導。国民の半数以上は「木原事件」を知っているはず。隠せば隠すほど「お上」に対する「不信感」が膨らむ。ひょっとすると、選挙のたびに岸田自民は負け続けるかもしれない。

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