牧太郎の青い空白い雲/913
例の木原誠二官房副長官の妻の元夫が2006年に不審死した「謎の事件」。「例の」と書いたが、『週刊文春』以外のメディアは殆(ほとん)ど報じていないので、改めて「謎の概要」を書かなければならない。
同誌7月13日号の記事によると、06年4月10日、風俗店勤務の安田種雄さんが夜中3時ごろ、居間で血まみれになって死んでいた。当時、種雄さんの妻だったX子さん(木原副長官の現在の妻)は、子ども二人と隣の寝室で寝ていて気づかなかった!と警察に供述した。
警察の見立ては覚せい剤乱用による自殺か? その後、未解決事件という扱いになった。
それから12年後、未解決事件の担当刑事が「ナイフへの血の付き方が自殺というには不自然」と気づき、再捜査。当時、X子さんと親密だったY氏が「この時、安田宅に行くと、X子さんが『夫婦げんかになって、殺せるなら殺してみろと夫に刃物を握らされたので切ってしまった』と話した」と供述した。
殺人か、傷害致死か?
18年10月、警察はX子さんを任意同行。逮捕寸前まで捜査が進んだが、なぜか突然の幕引き?
実はX子さんは、種雄さんと死別した後、銀座の高級クラブで働いていたが08年、木原さんと出会い、14年に女児を出産し結婚していた。
『週刊文春』は「捜査打ち切りに政権側から圧力があったのでは......」と指摘している。推理小説のような話だが、これが事実なら......。警察は「真相」を明かすべきだ。
種雄さんの父が「再捜査」を求めているし、第一、木原さんも、このままでは「夫殺しと結婚した男」と誤解され続けることになる。
ところが、警察庁の露木康浩長官は「証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」とサラリと説明。新聞、テレビなど記者クラブに所属するメディア各社はこの件を報じようとしない。
しかしネットでは、この情報は流れっぱなし。警察に対する信頼がなくなっている。
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、東京地検特捜部が大会組織委員会の森喜朗元首相を参考人として任意で事情聴取。大会スポンサーから「多額のお金」が森さんに渡されていたことが判明したが、なぜか「立件」されなかった。その時も「捜査に対する政権の圧力」を感じた。
20年に起こった「大川原化工機」事件では、社長ら3人が「武器に転用できる機械を中国に違法輸出した」という外為法違反の容疑で警視庁公安部に逮捕されたが、公判直前に起訴が取り消された。
政権側の意向に沿った「捜査の暴走」で冤罪(えんざい)だった。逮捕された一人は長すぎる勾留生活で、体調を崩して亡くなった。「警察による殺人」という見方も出ている。
政権と警察・検察の「異様な蜜月」を何とかしなければ、日本は「暗黒」になる。